クリスの夢③
尋ねたとたん、クリスの笑みが深まった。小首をかしげる仕草は愛らしいのに、ジェーンの肝はどんどん凍えていく。
「違うよね。ジェーンとレイジさんが僕にも考えて欲しいんでしょ」
「いあ、べ、別にそうとは言ってな――」
「ね?」
語尾にハートでもつきそうな甘い声で、首に巻きつくロープが視えることもあると、ジェーンははじめて知った。
「え。クリスも開発に加わりたいのか?」
翌日の昼休み。更地に佇む丸太山のふもとで、ジェーンはレイジにクリスも新遊具開発に参加してもいいか尋ねた。ところが、クリスの複雑なひねくれ心を理解していないレイジは、ずばりと図星を突き刺してくる。
ジェーンは慌てて訂正した。後ろでむすりと腕を組むクリスにも聞こえる大声で。
「違います! 私がクリストファー先輩様にお願いしたんです!」
「お前洗脳でも受けたのか」
正しくは脅迫だが、ここでうなずくわけにはいかない。艶笑の暗殺者の視線が、ひたりと首に押しつけられている。
「と、とにかく! クリストファー先輩様はデザインのセンスもいいですし、いてくれて助かること間違いなしです。ほら、三人寄ればもんじゃの知恵ってやつです!」
「文殊の知恵な。確かに不安になってきたわ。まあ、別に構わねえけどよ。でも意外だな」
レイジはクリスに視線を移してにたりと笑う。
「今まで優等生面して女帝から逃げてきたお前が、指示されてないめんどうごとに首突っ込むなんてよ。反抗期か?」
「別に。先輩の僕を差し置いて、ジェーンが大きな仕事に携わるなんて癪ですから」
それに、と視線を下げたクリスの指が、スケッチブックを握り締める。
「僕も新しいことをやってみたくなったんですよ……なんとなく」
「なんとなく、ね」
クリスの言葉尻をくり返しながら、レイジはなぜかジェーンを見た。きょとんと首をかしげたが、笑みではぐらかされる。
「で。新遊具の方向性を今一度考え直してみたんだが」
レイジは丸太に寄りかかると、ジェーンとクリスを順に見ながら切り出した。




