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クリスの夢②

「そんな。ジャスパー部長、こういうの好きそうな人でしたよ! 見たらきっと気に入ってくれますよ!」

「違うんだよ、ジェーン。ダメなのはそっちじゃない」


 手を差し出されて、ジェーンはクリスにスケッチブックを返した。それを大切そうに閉じるクリスに、目でどういうことか問いかける。


「アナベラ部長だ。あの人は演劇に関わる仕事を独占していて、もう何年も交代してない。ガーデンの花形であるショーやパレードに携わることは、整備士としても名誉あることなんだ。だからあの人にゆずる気なんてないんだよ」


 アナベラの横暴にはクリスも口出しできないのだと知り、ジェーンはかけるべき言葉が見つからなかった。創造魔法士としてはおろか、記憶障害のせいで社会人としても認められていないジェーンの言葉を、アナベラが聞くはずもない。

 脳裏にロンの姿が過るが、これ以上迷惑はかけたくなかった。


「あのさ。ジェーンってレイジさんとなにか企んでるでしょ」


 クリスは出し抜けに言った。見ると意地の悪い笑みを浮かべている。


「た、企むなんて……! ちょっと新遊具の案をいっしょに考えているだけですよ!」

「やっぱりね。さっき戻りがけに見えたんだ。開発エリアからなぜか生えてるブルーベルの花が。そしたらきみらしき話し声も聞こえたんだよね」


 うっとりと細めた目に剣呑な光を差して、クリスはじりじりと詰め寄ってくる。中性的なあどけない顔に反して、油断すれば噛みつかれそうな鋭さを感じ、ジェーンはあとずさった。

 しかしマネキンの足につまずいて手をつく。気づくとクリスは目の前にしゃがみ込んでいた。


「レイジさんどうせ行き詰まってるんでしょ? メモ紙書いては捨ててるし、ひとりでイライラしちゃってるし」


 ジェーンはクリスの圧に呑まれてうなずく。脳内でレイジの怒声が響いたが、正直怠惰先輩よりも微笑みながら視線で射抜いてくる童顔先輩のほうが怖い。


「じゃあ僕もいなきゃダメだね。ジェーンだけじゃ頼りないもんね」

「え。それってクリストファーさんもいっしょに案を考えたいってことですか」

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