登場!演劇部部長ジャスパー!②
ドレスの裾をつまんで軽く体を振ってみせるプルメリアは、腰まである長いウィッグをつけている。それに目もカラコンを入れて桃色に変わり、普段とは違う大人っぽい化粧を濃いめに施している。
そんなに変わらない、とはかなりひかえめな表現だった。
「じゃあジェーンちゃん、俺らは誰かわかるっスか?」
そこへ気取った足取りで青い鳥の着ぐるみをかぶった人と、金髪に青い目を持った礼装の男性が歩み寄ってきた。
綿雲のようにもこもこした翼で蝶ネクタイに触れる鳥に、ジェーンは弱く笑う。
「鳥の着ぐるみはルークですね。喋り方でバレバレっス」
ルークはいたずらっ子のような笑い声をこぼすと、「ご名答!」とその場でひとつ回ってみせた。
ジェーンは金髪の男性に目を移す。すると男性はちょっと不安そうに眉を下げた。彼もシェアハウスで過ごしている時と違って、化粧をしていた。
ジェーンを映す瞳は紫のあたたかい光ではないけれど、間違えない。
「あなたはダグラスですね」
彼はパッと表情を明るくした。
「気づいてくれてうれしいよ、ジェーン」
気づかないはずがありません。混乱と不安に陥った最中でも、大勢の人々の中で私にはあなただけが光り輝いて見えたんですから。
口には出せない思いをそっと胸にしまい込み、ジェーンはダグラスにただ微笑みかけた。
「はいはい。お前ら、お友だちに会えたからって練習中にハジケるなよー。その笑顔は本番まで取っとけ」
その時、手を叩いて注目を引く男性が現れた。これまた派手な衣装を身にまとった出で立ちに、ジェーンは目をまるくする。
たとえるなら幻覚世界だろうか。街並みの赤や黒、緑、青の一番濃いところだけを切り取って、ぐにゃりと織り混ぜたような柄の上着を着ている。そして下は蛍光色のズボンだ。目に痛い。
「あの人はなんの役を演じられている方ですか?」
ジェーンはプルメリアにこそりと尋ねた。
「あの人は部長のジャスパーさんだよ……」
「あれは私服っスよ、一応」
ルークからの補足に、ジェーンは「まあ」と静かに驚く。




