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晴れ時々スコール……④

 この一ヶ月、私がしてきたことはなに?

 こんなことでロン園長に恩を返せるの?

 気づけば立ち止まっていたクリスの背中にぶつかった。


「きみね、バカ素直で正直過ぎ」

「え……?」


 クリスはぶつかったことなど構わず、勝ち気な顔をずいと突きつけてきた。


「あんなオバサンの言うことなんか全部聞き流して、テキトーにうなずいたり謝ったりしとけばいいんだよ。心の中で中指立ててさ」

「おばさん……」


 愛らしく幼顔のクリスから飛び出た暴言に、ジェーンはしばし耳を疑う。

 中指を立てるという仕草がどんな意味を持つのかわからなかったが、きっとよからぬことだ。思わず利き手の指を押さえた。


「で、でも私は正しいことを言っただけで、間違っているのは――」

「そんなのはわかってるよ」


 クリスはジェーンの唇に人差し指を立てて遮る。日誌の届けものを頼まれた時、クリスはいなかったのに青い目に迷いはない。

 揺らがない眼差しでジェーンをまっすぐに捉えていた。


「あの人はね、昼休みに楽しみにしてたアイドルのライブチケットが取れなかったから怒ってるだけ。やつ当たりだよ。そんなのとまともに取り合うほうがバカじゃん」

「クリストファーさんは、私のこと信じてくれるんですか……?」


 拍子抜けしたようにクリスは目をまるめた。その顔を見てジェーンは、自分がちょっとズレた返しをしたのだと気づく。

 でもやつ当たりをされた怒りよりも、ジェーンの肩を持ってくれるクリスへの喜びが勝った。

 クリスは「あ」と苦く表情をしかめて、顔を背ける。


「べ、別に。あんな老害ババアと比べたらきみのほうがましってだけだから!」

「さっきも、バインダーで叩かれた時思ったよりも痛くありませんでした」

「きみが石頭ってだけじゃん。僕は手加減なんかしてないからね!」

「クリストファーさんって実はすごくいい人なんですね」

「んな……っ! そういうところがバカ素直で正直って言ってんの! なんでも真に受けてクソババアに潰されても知らないからね!」


 クリスは目をつり上げて怖い顔をしていたが、ジェーンにはどう考えても親切に警告してくれているようにしか聞こえなかった。


「はい。わかりました」

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