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晴れ時々スコール……②

「誰が勝手に昼休憩に入っていいなんて言ったんだ!」

「え。それはアナベラ部長が日誌を届けたらそのまま――」

「うるさい! 私は許可した覚えはないね!」


 きっぱり断言したアナベラにジェーンは開いた口が塞がらなくなった。せつな自分の聞き間違いかと思ったが、ロンに会える喜びとともにはっきり覚えている。

 ジェーンはもう一度言い募ろうとしたが、アナベラは手で振り払う仕草をした。


「まったく、お前みたいな常識知らずははじめてだよ! 本当にあのもうろく園長の考えてることはわからないね。まあ、記憶障害者に期待しても無駄か。教えたこともどうせ明日には忘れちまうんだろ」


 怒りか羞恥かわからない熱が、カッとジェーンの頬を焼く。社会人として、創造魔法士として、至らない部分を指摘されるのはまだ納得がいく。

 だが記憶障害はジェーンとてなりたくてなったわけではない。治せるものなら今すぐにでも治している。

 しかしどうにもならない自身への無力感や、運命への失望がぐるぐると渦巻き風となる。

 その風を呑み込んで爆炎となったのは怒りだった。目覚めてからはじめて抱いたその感情に戸惑いつつも、止まらない。

 気づけばジェーンは、アナベラの腕をわし掴みにしていた。


「訂正してもらっていいですか、ロン園長のこと」

「な、なんだい。手を離しな」


 アナベラが振りほどこうとしても、ジェーンは力を込めて離さない。相手が痛みにか、眉をひそめようと構わなかった。


「私の問題にロン園長は関係ありません。園長は私に親切にしてくださっているだけです。私がどれだけ不出来だろうと、ロン園長の立派な精神が非難される謂れはありません。訂正してください!」

「なにをキレてるんだか。やだねえ、最近の若い子はすぐ頭にきて暴力に訴える」


 アナベラはひょうひょうとした面持ちで、ジェーンの手を見た。そこで少し冷静になったジェーンは手を引っ込める。

 だからといって、アナベラに態度を改める素振りはない。掴まれた袖を整え、鼻をツンと上向けて二重あごのしわを伸ばす。


「ロン園長、ロン園長って気味が悪いね。特別扱いしてもらってることをそんなに鼻にかけたいのか? だったらウチやめてあのジジイの召使いにでもなりな!」

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