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晴れ時々スコール……①

 なるほど、とうなずきつつジェーンは紙袋からランチボックスを取り出す。今朝の弁当当番はディノだったが、ジェーンがキッチンに下りた時には「もう終わった」と言われ、この紙袋を渡された。

 今日のお昼は見てのお楽しみ。ジェーンはわくわくしながらふたを開ける。

 そして絶句した。


「俺もコンビニ弁当だから偉そうなことは言えないが、お前の弁当雑過ぎるだろ」


 ひょいと覗き込んできたレイジが目元を引きつらせるのも無理はない。ランチボックスには仕切りを挟んで白米と缶詰めが入っていた。

 一度目を閉じて開けてみても白米と缶だ。〈サバ缶水煮〉と書いてある。

 ジェーンは憐れむようなレイジの目に気づき、勢いよくふたを戻した。


「こここれはディノが作ったんです! 私じゃありません! それに、これでも進歩したほうです!」

「ちょ、これ以上残念な弁当があったのかよ」

「前は大きなジャムパンが箱にぎゅむっと押し込められてました。ルームメイトから『甘いのはメシじゃない!』『おかずは!?』と散々言われたのです。主菜と主食を用意しただけでも前よりはずっとましです!」

「おー……。よくわかんねえけど、そのルームメイトってやつら楽しそうだな」


 俺の弁当はやらねえぞ、と距離を取るレイジを見て、ジェーンは嫌みを言われたのだとわかった。ムッと唇を突き出し「いりません」と言い返してやる。

 同じメニューを食べているみんなはどうしているかなと思いつつ、ジェーンは缶詰めのふたをぱきゅりと開けた。


「……ディノってごはん炊けたんだ」


 サバの水煮は塩気がきいていて普通においしかった。




「ジェエエエンッ!」


 開発現場でレイジと別れ、昼休みから事務所へ戻ったジェーンを見るなり、アナベラは吠えた。机を叩きつけて立ち上がり、ずんずん歩いてくる。その形相は、唇はひん曲がり目は判眼になってつり上がっていて、太い眉は角のように逆立っている。

 ジェーンは思わず壁へあとずさった。ベルトに乗った腹を突きつけて、アナベラは仁王立ちした。


「私の断りもなくどこ行ってたんだ!」

「お昼ですけど」


 なぜ今さらそんなことを聞くのか、内心首をひねりながら答える。

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