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怠惰先輩の憂鬱⑤

 シェアハウスでリースひとつ水蒸気に創り変えるのにも苦労した。ジェーンはレイジに目で追いすがる。


「これ、水蒸気にするのに一時間で足りますかね……?」

「さあな」

「レイジさあん」


 レイジはふと足を止めて首裏を掻いた。いつものようにローブのフードをかぶったかと思うと、無造作に人差し指を振る。

 彼の指先から魔力の煌めきが放たれた。

 ハッとして振り返ると、ブルーベルの屋根の先端から徐々に白くもやっていく。ジェーンも水蒸気に物質変化させる魔法を施して、レイジの背中に駆け寄った。


「レイジ先輩、お昼にしましょ。私お腹すきました!」

「先輩はやめろ。気色わりい。みじんも敬ってないだろ、お前」

「そんなことありません。頼りにしてますよ、レイジ先輩」


 階段を下りきったところでジェーンはレイジを追い抜かし、弁当を置いてきた丸太の小山へ走り出す。


「……悪かったな」


 その時、後ろからひとりごとのような謝罪が聞こえた。ジェーンは目をぱちくりとさせ、立ち止まる。うつむくレイジを見てすぐに思い至った。

 新遊具開発のメモ紙が紛失した時のことだ。レイジは机に触っていない自信があったジェーンに責任を押しつけた。あの時レイジは一瞬だけ、目に迷いを浮かべたことを覚えている。

 ずっと気にかけてくれていたんだ。


「なんのことかわかりません」


 そう口ずさんでにこりと笑い、ジェーンは忘れたふりをした。

 レイジの反応は見ずにきびすを返す。丸太に登って弁当の紙袋を持つと、レイジに向けて振ってみせる。横を見ればぐうたら先輩の弁当らしきものも、レジ袋に入って置かれていた。


「いつもここで食べてるんですか?」


 丸太を登ってくるレイジにジェーンは首をかしげる。


「最近はな。食堂行くと部長や園長がいるだろ。見つかるとめんどい」


 レイジはげんなりした顔でため息をついた。任された仕事がうまくいっていないせいで顔を合わせづらいということだ。

 もっとも、アナベラはその限りではなさそうだが。部長の長話によく捕まっているノーマンは、永遠と自慢話や愚痴につき合わされていた。

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