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怠惰先輩の憂鬱④

「わあああ!?」


 おとぎの国の愛らしい家が一変、ヘドロをかぶったホラーハウスの様相となる。ジェーンは頬を挟んで絶叫した。


「やわらか過ぎ。ほうしゃの含有率が足りねえんだ」

「ほーしゃ……」

「鉱物の一種だよ。こいつを加えれば硬くなる。見てろ」


 垂れたスライムを押し戻して、レイジは屋根を一度叩いた。見た目の変化はない。

 けれど、レイジの視線にうながされるままジェーンが触ってみると、弾力性の中にぎゅっと詰まった手応えを感じる。

 引っ張ればスライムはジェーンの指についてくるが、まったく垂れる気配がなかった。


「これがほう砂の力。すごいです!」

「お前感覚だけで魔法使ってんだな。扉の木目加工もちょっと雑だし」


 レイジに指摘されると木に見立てたはずの扉は、ひと目でプラスチック製とわかる仕上がりだった。技術、知識ともにまだまだ未熟だと痛感し、ジェーンは唇を尖らせる。

 だからこそ先輩たちから教わりたいのだが、忙しさを盾にして誰も構ってくれない。

 不満の気持ちがつい口をついて出てくる。


「じゃあレイジさんは自転車が倒れない原理を理解して、自転車に乗ってるんですか」

「いや知らねえな。知らなくても乗れる」

「ほら! それといっしょです!」

「お前、なまいき」


 レイジはふいにジェーンのショートローブを掴んで、くるりと頭にかぶせてきた。ジェーンはびっくりしてすぐにローブを取り払う。

 文句を言おうとして見上げた先には、ブルーベルの家を見つめてかすかに笑っているレイジがいた。


「お前、明日から昼休みは毎日ここに来いよ」

「それって……」

「スライム新人となら、もう少しおもしれえこと思いつくかもしれないからな」

「えー! なんですかそのあだ名! やめてください」


 レイジはにやりと笑うばかりで答えず、階段を下りはじめる。振り返らないまま、親指で家をさした。


「とりあえずこれ消しとけよ。開発の邪魔だ」


 ジェーンは思わず「げ」とこぼす。消さなくてはならないことを完全に失念していた。なにも考えず二階建てなんて大きなものを創造してしまい、血の気が引いていく。

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