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怠惰先輩の憂鬱②

 広い更地を見つめるレイジの横顔は、途方に暮れているようだった。それが幼い迷い子のように見えて、ジェーンは思わず身を乗り出す。


「それじゃあどうするんですか」

「どうもしない。俺が使えないとわかれば部長がどうせ動くんだろ。俺はいつだってこの仕事辞めてもいいんだ。職探しがダルいからつづけてるだけだし」


 レイジが辞職まで考えているとは思わず、ジェーンは息を詰める。ロンの心配や期待に揺れる眼差しが過った。


「でもロン園長はレイジさんを信じてますよ!」

「だから? 俺は自分の身のほどってやつがわかってんだ。過剰な期待を寄せられても迷惑でしかねえよ」

「だったら、私とならどうです!?」


 ジェーン自身、声に出してからその言葉の大胆さに驚いた。レイジは頭だけ起こし、怪訝な目つきを投げかけてくる。

 一度口にした言葉は引っ込まない。ジェーンは丸太に手をついてレイジに詰め寄った。


「私とふたりで考えればもっといい案を思いつくかもしれません。私は魔法士として未熟ですが、想像することはできます!」

「はっ。確かにお前の頭は夢見がちでおめでたいようだけどな。頭でっかちじゃ話にならねえよ。俺らは創造魔法士だ。実現させてなんぼ。お前こそ身のほどを知れ。そういうことはな、家一軒建ててから言えよ」


 レイジは小バカにする笑みを浮かべ、滑稽こっけいにも寝転がりながら尊大に自論を並べ立てる。ジェーンにはひとつも理解できなかった。

 それはありもしない空想だとなぜ決めつける? 自分の限界をなぜここまでだと見切りをつけなければならない?

 課題を達成する技量が足りないなら、身につくまで努力すればいい。

 どんな技術もどんな偉業も、最初は想像と夢からはじまった。

 レイジの言葉はすべて、めんどうな現実から逃げたいだけの言い訳だ。


「……言いましたね? 今、家一軒建ててからって」

「あ? それがなんだよ、っておい! どこ行く!」


 ジェーンはレイジの声に耳を貸さず、丸太の小山を中腹まで下りる。そこからひと思いに飛び下りた。

 ロングブーツの靴底が地面を叩く。すると魔力の光が弾け、まるで地割れしたかのように線が走る。ジェーンの周りだけが木目調の床に創り変わった。

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