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ロンの心配事①

 アナベラの言っていた青い屋根の家はひとつしかなかった。小道の奥にひっそりと佇む背の高い家は、ブルーベルの帽子をかぶっている。

 納屋のような木扉には鍵がかかっていて入れない。ジェーンは二階を見上げた。


「あそこから入れるのかな?」


 脇には外階段がついていて、二階に繋がっている。鎖で通せんぼしてあったが、ジェーンは従業員だ。跨いで進み、二階の扉をノックする。


「やあ、ジェーンくん。きみが日誌を届けに来てくれたのかい。うれしいよ」


 深い青緑色の目をやわらげ、にこにこ笑うロンが出迎えてくれた。園長はジェーンを中へ通し、紅茶をすすめる。


「ひと息いれていきなさい。少し話を聞かせて欲しいんだ」


 玄関扉からすぐのところにソファとローテーブル、そして奥に執務机と本棚、簡易キッチンがある。外観の印象よりは広々として、落ち着いた雰囲気の部屋だった。


「驚きました。ロン園長の執務室がガーデン内にあって、こんなにかわいらしいだなんて」


 ソファの前に立ったジェーンの目に、壁にかかった一枚の絵画が留まる。それはガーデン全域を描いたものだった。

 しかし雲の城の下方だけ雲がかかっている。


「ふふっ。お客さんの反応を直に感じたくてね。それにここは居心地がいいんだ」


 紅茶をいれてくれたロンがソファに座るのを待ってから、ジェーンも腰を下ろした。

 ローテーブルに用意されていたミルクと砂糖を加え、マドラーで混ぜる。白く細長い尾を引いて、ミルクは茶色い渦の中に溶けていく。


「整備士の仕事はどうだい。慣れてきたかな」


 紅茶をひと口すすってからロンはゆったりと問いかけた。


「はい。まだ戸惑うこともありますが、少しずつ慣れてきてます」

「それはよかった。アナベラ部長は癖の強い人だと聞くから、ちょっとだけ心配してたんだ」


 ジェーンの舌に苦味が広がる。

 整備部の身内に対する横暴な態度から、外部の人間へ愛想を振りまく変わり身の早さは、確かにとんだ曲者だ。それに新人で、創造魔法士としては素人なジェーンには、掃除しかさせない厳しい一面もある。

 でもロンが言っていたように、整備士の仕事は客の安全に関わる。魔法士の道が険しいのは当然だ。

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