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シェアハウス全会議④

「劇団員はノリのいいところが玉にキズっスよねえ」


 ぼやくルークの横でディノは欠伸をこぼす。その時、カレンのメガネがきらりと光った。


「ルーク、なにかいい案があるようね。話してちょうだい」

「げ。マジっスか」


 カレン議長からの名指しにルークはぎょっと目を剥く。しかし目玉を泳がせたのも数秒のうちで、彼は不敵に笑い出した。


「僕の頭脳に頼らざるを得ないようだね!」


 勢いよく席を立ったルークにはなにかが乗り移っていた。颯爽とテーブルを回り、短辺に手をついて身を乗り出す。かけてもいないメガネを上げる仕草をして、指をパチンと打ち鳴らした。


「簡単なロジカルだよ。昼食を買えないなら作ればいい。そう! みんなで順にみんなのお弁当を作ればいいんだ。名づけて『お弁当ローテーション作戦』! この作戦の成功率は僕の完璧な試算によると九九.九九九九――」

「あら、普通にいい案ね」

「みんなのお弁当食べれるって楽しそう!」

「ルーク、意外とやるじゃんお前」

「急に通常運転に戻るのやめてもらっていいっスか!? 俺が恥ずかしいでしょ!?」


 カレン、プルメリア、ダグラスの賛同を得て、議題の方向性は急速に固まっていく。ひとり喚くルークをカレンは流れるように無視して、ディノへと目を移した。


「ディノもそれでいいかしら?」

「……弁当ってなんでもいいんだよな?」

「そうね。文句はなしにしましょう。嫌いなものが入っていても、おかずが少なくてもね。でもアメ玉一個とかはやめてよ」


 カレンの忠告に笑いつつ、ダグラスが口を開く。


「五人でちょうど一週間。ひとり三、四回くらいだからどうにかなるだろ」


 同意を求めるようにダグラスがルームメイトたちを見回すと、言い出しっぺのルークはもちろんディノもうなずいた。

 ジェーンは心地よく締めつけられる胸を押さえ、グッと息を詰める。整備部事務所にいた時はいつでも心が重かった。背中をまるめて手足を縮込ませ、部屋の隅っこにしか自分の立ち位置を見つけられなかった。

 けれど今は立ち上がることができる。みんなの注目を集めても怖くない。色とりどりの五対の瞳が、きっと微笑みかけてくれると確信が持てた。

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