シェアハウス全会議①
準備をしていて遅れたジェーンが入った時には、プルメリアとカレンは体を洗い終えていた。
「軽く流して、湯船で待っていてくれるかしら」
シャワーの水温を確かめてから渡してくれたカレンに、ジェーンは素直にうなずく。湯船はとても広くて、足を畳めば女性三人が並んで入ってもゆとりがあるだろうと思われた。
「はー……」
湯に浸かると、全身に染み込むかのような心地よさに包まれ、思わずため息がもれる。威圧的なアナベラを相手にしていた気疲れも、ガーデン中のゴミを漁っていた身体的疲労も、この湯気といっしょに溶け出していくようだ。
肩まで潜って、湯船の縁にあごを預けながらジェーンは至福を味わった。
ふと、鈴の転がるような笑い声が浴室に響く。
「ごめん。ジェーンが子犬みたいにかわいかったから」
髪をもこもこの泡で覆ったプルメリアが言う。シャワーを止めたカレンも振り向いて、「本当ね」と言いながらジェーンの鼻を指先でちょんとつついた。
あごを乗せているのが子どもっぽい仕草だったのだと気づき、ジェーンは身を起こしてうつむく。プルメリアとカレンの目はとても暖かかったが、それが余計に気恥ずかしかった。
「整備士初日はどうだった? どんな仕事してたの?」
「みんなジェーンの魔法に驚いてた!?」
髪にシャンプーをつけながらカレンに問いかけられ、ジェーンの心はギシリときしんだ。かぶせるように弾んだ声を上げたプルメリアの輝く眼差しが、さらに追い打ちをかける。
ジェーンはふたりから目を逸らしつつ、口元まで沈んでどう言おうか言葉を探した。
「今日は主に掃除でした。私、魔法士としても新人なので、まずはトイレットペーパーなどの創造から教えてくれまして……」
「簡単なものから慣れさせてくれてるのね。いきなり大きなものを任されても困るものね」
ジェーンの思惑通りカレンは肯定的に受け取ってくれたが、なんとも複雑な気持ちだった。
ルームメイトの言うように、今のトイレ掃除は後々整備士として活躍するための練習と信じていいものかどうか。アナベラの意地悪な笑みを思い浮かべると、不安でならない。




