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無愛想に隠れた優しさ③

「ディノ?」

「早くしろ。もうすぐ回収業者が来るぞ」

「はい!」


 時間を気にしてくれるディノに問答は野暮だった。なによりジェーンの心は、申し訳なさよりもうれしさで弾んでいる。

 軍手を身につけ、ジェーンはディノよりも多くのゴミ袋を調べようと意気込んだ。


「もしかして、これか?」


 しばらくして、ディノが一枚の紙を掲げて見せ、ジェーンは飛びついた。逸る気持ちで件名と記入者の名前を確認する。


「新エリア、新遊具開発企画書……担当者レイジ。これ! これです! 間違いありません!」


 折れたところのしわをていねいに伸ばし、ジェーンは思わずメモ紙を抱き締めた。そして手伝ってくれたディノに深々と頭を下げる。


「ディノ! 本当にありがとうございます! あなたがいなかったら見つけ出せませんでした……!」

「礼はいいから、ここ片づけるぞ。足の踏み場に業者も困る」


 無愛想な返事だったが、手近なゴミ袋から片づけに取りかかるせつな、ディノの口端にはわずかに笑みがにじんでいた。

 ジェーンはレイジのメモ紙をポケットにしまい込み、散乱したゴミを拾うディノの手をやんわりと制する。


「片づけは私がやります。ディノはどうか仕事に戻ってください」

「あんたのその敬語」


 出し抜けにディノは切り出す。じっとジェーンを見つめる目には純粋な疑問の色が浮かんでいる。


「俺たちにまだ慣れないのか。タメ口でいいってダグラスが言っただろ」


 ジェーンは視線を下げた。それは自分でも不思議に思っていたことだ。シェアハウス生活初日、確かにダグラスからかしこまらなくていいと言われ、数日間は砕けた口調で話していた。


「すみません。みんなに遠慮しているわけではないんですけど、なんだか自然と敬語が混じるんです。このほうが話しやすいのですが、気になりますか……?」

「ああ、気になる。堅苦しくてじんましんが出る」

「そこまでですか!? じゃあやめます!」


 ふいに、下から覗き込むようにしてディノの顔が近づいた。


「ウソ」

「へ?」


 仏頂面とも映る無表情でささやかれた言葉を、とっさに処理できない。ぽかんと見つめるばかりのジェーンに、ディノは今度ははっきりと意地悪な笑みを浮かべた。

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