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無愛想に隠れた優しさ①

 一時間が過ぎ、二時間経ってもレイジのメモ紙は出てこなかった。冬の太陽はせっかちで、陽光にもう金色の光を帯びはじめている。

 何個目かわからないゴミ袋の口を結び直して、ジェーンは座り込んだ。


「私が捨てたあとに、誰か動かしたかもしれないもんね」


 最初に目をつけたところに、朝出したゴミ袋はなかった。その周辺からしらみ潰しに手をつけてみたが、まったく手応えがない。

 こうなってくるとメモを見落としただけで、すでに漁ったゴミ袋が目当てのものだった可能性も出てくる。


「見つかるまで帰れないのかな。おうちに帰りたいよお……」

「あんた、こんなところでなにやってんだ?」


 突然降って湧いた声にジェーンはびくりと肩を跳ねさせ、飛び上がった。振り返るとカーキ色のつなぎ服を着た男がリヤカーを引いている。


「ぎゃあ! 回収業者さんすみません! ゴミまだ持っていかないでください……!」

「おいおい。ルームメイトの顔忘れたのかよ」


 服装でてっきり業者の人だと思ったのは、緑の呆れた目でジェーンを見るディノだった。


「ディノ! 会えてうれしいです!」

「あー。お疲れ」


 ディノはジェーンが漁っている物置きからふたつ離れたそれを開け、台車にたんまりと積み上げられている落ち葉入りの袋を放り込みはじめた。園芸部は今日、ガーデンのどこかで清掃をしていたらしい。

 両手に袋をふたつずつ軽々と持って、涼しい顔つきで次々と運んでいくディノの姿にジェーンは見入る。同じゴミ捨て作業でも、効率を考えた無駄のない動きはこうも美しいのか。


「で。あんたこんなところでなにサボってるんだ」


 手は止めないまま寄越された言葉にジェーンはムッとした。


「サボりじゃありません。企画書のメモを探しているんです!」

「間違えて捨てたのか」

「私は捨ててません! でもレイジさんに探してこいと言われたので、仕方なく……」

「ふうん。整備部の新人は大変そうだな」


 そうこうしているうちにリヤカーのゴミはなくなろうとしていた。ジェーンは慌ててメモ探しに戻る。自分もてきぱきと動かなければ、本当に帰れなくなるかもしれない。

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