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355話 源樹イヴへ!②

「すみません。私のせいでディノには、辛い決断をさせました……。でも、もしうまくロナウドを説得できたら、また――」

「いいんだ。俺はひとりじゃないってルークが教えてくれた。ダグラスもカレンもプルメリアも、園芸部のみんなもいる。それにジェーンが」


 不自然に途切れた言葉に首をかしげた時、手を引かれて立ち止まった。きょとんと目をまるめるジェーンのあごを、ディノはそっと上向かせる。


「この血……」


 指の腹で唇をなでられた。瞬間、ロンに強引にキスされた光景がよみがえり、ジェーンは耳の先まで熱くなる。

 今になって恥ずかしさが込み上げてきた。襲われているところをディノに見られたと思うと、ますます居た堪れない。

 ジェーンは慌ててディノの手を下げさせた。


「あああのっ、これは私の血ではないのでだいじょうぶです! そ、それよりルークはどうしたんですか!?」

「あいつは俺を助ける時怪我したから、救護室に行かせた。今、はぐらかしたよな? あんたの血じゃないってことは……」


 数瞬、思考を巡らせるように伏したディノの目が、細くしかめられる。まっすぐに向けられたそれは光輪の光を受けて強く煌めき、若葉の水晶にジェーンを捉えて離さない。

 気づけばジェーンは、源樹の幹まで追い詰められ、ディノの腕の中に閉じ込められていた。


「ディノっ、今はこんなことしてる場合じゃないです! ロナウドが来ちゃいますよ……!」

「イヴ。時間稼ぎしてくれ」


 えっ、と思った時には葉っぱがザアッと揺れ、上ってきた光の階段が壁のように立ち上がった。

 しかしそれもすぐに見えなくなる。頬と後頭部に回ったディノの手に振り向かされ、視界には彼だけが映った。

 羽ばたきの音が聞こえそうな長いまつ毛に目を奪われているうちに、しっとりしたぬくもりが唇に触れる。


「ん……っ」


 それは最初、怯えるように儚く重ねられていた。互いの熱が溶け合った頃、ディノの唇はジェーンをやさしく包み込み、探るようについばむ。

 そして甘い吐息がこぼれたかと思えば、血の痕をぺろりと舐められた。


「ディ、ディノ……」


 そこでようやく我に返り、ジェーンはディノの肩を押して口づけをほどく。しかしディノは背中に腕を回して、ジェーンを離さなかった。

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