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350話 私の名前は――④

「ここまで怯えた表情ひとつ見せないとは、お見事です」


 心にも思っていないことを言う薄ら笑み顔へ、ジェーンは足を振り上げる。しかしそれはいとも容易く腕に阻まれ、脇に抱え込まれた。

 ロンはそのままジェーンの両足を腹へ押さえつけながら、伸しかかってくる。

 息が詰まって苦しい。


「この身がどうなろうと、私があなたに屈することはありません」

「さすが神鳥に愛されし御心《みこころ

》。気高く美しい……。ですが、その矜持きょうじもいつまでもちますかな」


 浮き上がった腰の下に潜り込んだロンの手が、下着ごとジャージパンツを掴む。

 手錠の柔軟加工はまだほんの一部しか済んでいなかった。ひざ裏を押さえられた足は空を掻くばかりで、ロンに触れることも叶わない。助けを呼んだとしても、今頃みんなはハロウィンパーティーの最中だ。声が届くことはない。

 しかしジェーンは少しの不安と恐怖を振りきって、くすりと笑ってみせた。


「矜持? 見当違いもはなはだしいですね、ロナウド。これは信頼です」

「なんだと」

「私の友は、家族は、きっと助けにきてくれます」


 その時、けたたましい音を立てて窓ガラスが割れた。構えた腕で残った破片を砕きながら、押し入ってきたのはディノだ。

 ディノはガラス片を踏み締め、バールを振りかぶってロンに突進する。ロンはすかさず手をかざした。するとあっという間にディノの手からバールが蒸気となって霧散する。

 しかしディノは止まらなかった。バールが消されることは予測済みだった。掲げた手で固く拳を握り込み、ロンの顔を殴りつける。


「ジェーン!」


 鋭く名前を呼ばれた瞬間、ディノの足元から魔力の煌めきが舞い上がる。それが水蒸気への性質変化だと察し、ジェーンも即座に魔力を切り替えた。

 弱々しく瞬くジェーンの魔力を、ディノの魔力が力強く包み込んで支え、手錠を溶かしていく。

 ディノの魔力も不安定で、しきりに途切れていた。しかしジェーンよりは自由に使える魔力量が多い様子だ。それはディノ自身の内包する魔力量が元来多いのだと、ジェーンは繋がった魔力を通して知った。


「ディノ……!」

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