表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
346/365

346話 扉を開けて⑥

「聖騎士ダグラス、恐れ多くも神鳥アダム様の寵愛ちょうあいを受けし神官様に永久とわの誓いを申し奉る」


 ダグが歌うように口ずさんだのは、婚礼の宣誓だった。


「健やかなる時も、病める時も、喜びの時も、悲しみの時も、あなた様を敬い、慰め、たとえ死がふたりを分かつとも、この魂に懸けて永久に愛し笑顔を願いつづけることを誓う。これに異論なくば、我が口づけを黙して受け入れ給え」


 ヒビ割れた彼の唇が厳かに手の甲に触れる様を、ジェーンは涙の膜越しにひたと見つめていた。

 そっと顔を上げ、照れくさそうにはにかむダグに堪らなくなり、もう震えるばかりの手で彼の手を握り返そうとする。


「ダグ、私からも――」


 しかし、その先の言葉は唇に置かれた冷たい指に遮られた。


「きみは生きて、幸せになるんだ」

「え……」

「きみが幸せそうに笑って、生きていてくれることが俺の幸せだ。この先どんな選択をしようと誰と歩もうと、愛してる。だからきみは、必ず幸せになることを誓ってくれる?」


 ジェーンは首を横に振り、繋いだダグの手にすがった。


「あなた以外にっ、誰と歩めと言うんです! 私にはもう……!」

「いるだろ。新しい友だち。新しい家族」


 ぼやけた視界にはっきりと映し出された。キッチンで夕飯を作るカレンとルーク、食卓を用意するプルメリアとダグラス、そこへ遅れてやって来るディノ。みんなが振り返って微笑みかける。

 おかえり、と。


「彼らは……“ジェーン”の家族です」

「そう? 本当はもうわかってるんだろ。血の色なんて関係ないって」


 ルームメイトたちの笑顔を思い浮かべた時、胸にぽっとぬくもりが灯った。まるでダグに抱き締めてもらった時のように、ジェーンを安堵が包み込む。

 整備士の仲間たちも、演劇部や園芸部のみんなも、母や夫や子どもたち、そしてお客さんたちのために精一杯働いて、食べて飲んで、傷つき笑う。尊い命だ。


「ロナウドが近づいてる! 起きるんだ! 起きて自分の名前を呼んで!」


 アダムが慌ただしく飛び回りはじめる。青い翼が巻き起こした風に、ジェーンは体が引き寄せられる感覚がした。思わずダグにしがみつく。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ