その「いつか」はきっと近い②
次の瞬間、ひしゃげた音が弾ける。周りの扉枠が歪み、施錠部品が剥き出しになった。
「ディノ!」
ルークはすぐに中へ踏み込む。間取りは思っていたよりも狭く、廊下とトイレや浴室になりそうな小部屋があるだけだった。
「こんなもんなのか? いや、確かバルコニーがあったはず……」
しかし正面側は壁に閉ざされている。バルコニーは見せかけだけ、というのはよくあることだ。大地の国を象った街並みの家もそうだった。それにここはまだ改創中。間取りが妙でもおかしくはない。
「ディノ! ディノ! いるなら返事するっスよ!」
しかしルークは諦めきれなくて、バールで壁を叩き声を張り上げた。
ロンは創造魔法士だ。もしこの壁の中に空間を創り、ディノを隠されたらルークでは手も足も出ない。
もうなりふり構わずジェーンを引っ張ってくるべきか? 選択を迫られ迷い、ルークはうつむく。
「え……っ」
すると視界にとんでもないものが飛び込んできた。人の指だ。壁から生えている。
ルークは自分の目を疑いながらもしゃがみ込み、指に触れた。薄闇でよくわからないが男性のものに見える。肌の色は自分より濃い。間違いない、ディノだ。
「ディノ! そこにいるんスね!? 倒れてるんスか!? ディノ!」
ディノの指をぎゅっと握り、軽く引いたり揺らしたりしながら必死に呼びかける。
「……ううっ、なんだ……ルーク?」
「ディノオオオッ! よかった……! 怪我とか気分とかだいじょうぶっスか!?」
弱々しくかすれていたが、慣れ親しんだルームメイトの声が返ってきてルークは思わず叫んだ。目に熱いものがにじんでくる。なんだかとても久しぶりにディノの声を聞いた気がした。
「ああ、まあ……なんとかな。ルークはなんでここにいる」
「なんでじゃないでしょうが! あんたが帰ってこないからっスよ! ルームメイトのみんなで捜したんス。特にジェーンちゃんなんかひとりでロン園長から情報聞き出したりして、大変だったん――」
「ジェーン! あいつはまだここにいるのか! ショーはどうなった!?」
やけに切羽詰まった声を出すディノに圧されつつ、ルークは腕時計を見た。




