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ロンの回想②

 新しいショーは大盛況だ。そのことに後年のクリエイション・マジック・ガーデンの繁栄も確信して、ロンは笑みを浮かべた。

 ふと、夜の闇が深まる。ステージの明かりが落とされ、ガーデンの外灯も客も息を潜める。

 静寂が降り、遠くの喧騒がかすかに届いた時、妖艶な歌声が響きはじめた。ライトアップされた美女を観客は拍手で迎える。


――ここは、どこだ?


 思えば遠くまで来たものだ。

 四十五年前に目覚めた時、源樹イヴ一帯の土地は有名創造魔法士――アナベラの父――の私有地で、ただの草地が広がっていた。右も左もわからないロンがまずしなければならなかったことは、生活基盤を作ることだ。

 はじめてジェーンと会った時は、まるで当時の自分を見ているようだった。

 創造魔法の知識と技術を活かし、教員免許を取得して教師となった。その頃の伝で元オーナーと親しくなり、ガーデン計画を持ちかけた。

 この神聖なる土地を他人の手に渡しておくのは、我慢がならなかった。

 ショッピングモールや公園、マンションが一体となった複合施設の創造を考えていた元オーナーは渋った。しかし最後は金が物を言う。利益の十パーセントを渡すという取引で合意し、ロンはついに土地の権利を得た。

 そして目覚めてから二十年、四十歳の時にクリエイション・マジック・ガーデンを開園した。環境も経済的安定も地位も自信も整い、この時ようやく当時五歳のディノを息子として迎えることができた。


「それからさらに二十年か。きみには待たされたよ」


 ロジャー王を襲う美しい結晶魔法を目に映して、ロンは苦笑する。

 正直、もうダメかと思った。けれど彼女は目覚めた。これぞ神の導き。自分の意志は神とともにある。その道を阻むことは、たとえ最愛の息子でもあってはならない。


「きゃー!」

「なにこれ! 前見た時はなかったよ!」


 ひと際大きな歓声が耳に飛び込んできた。それと同時にオレンジ色と紫色の帯が、ロンの視界いっぱいに降り注いでくる。

 頭から滑り落ちてきたそれを手に取ってみると、ハロウィンの文字と日づけが印刷されていた。紙は半透明で、光を受ける角度によって色を変える。

 これがジェーンの言っていたサプライズ演出だ。

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