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ロンの回想①

 ロンを説得しに行った時も夕食をともにした時も、出されたシナモンアップルティーが脳裏を過る。あの中に、魔力の流れを一時的に乱す毒が仕込まれていたに違いない。


「そこまで、はあっ、そこまでやるのかっ、あんたは……!」


 不快感が頭まで回ってきた。手足が冷たくなっていく。再び吐き気が込み上げてきたけれど、なにも吐けなくて苦しさだけが胸に戻った。

 それでも魔力の繋がりは手放さない。目の前で数ミリずつ開いていく隙間が見える。

 向こう側は薄暗かった。水蒸気がほのかに空気の流れで揺れる。出口はそこにある。指さえ通ればそれでいい。

 ディノは勝手にあふれてきた涙でぼやける視界の中、硬い床に手を這わせた。爪先が通る。


「ジェーン……」


 もくもくと昇る水蒸気が薄くなっていく。


「無事で、いてくれ……」


 力を失った指が中ほどまで向こう側に届いた時、ディノの意識は暗闇に沈んだ。




 * * *



 特別観覧席に着くと、ロンの口からはため息がこぼれた。

 いろいろと誤算があった。ディノが予想よりも強く反発し、監禁しなければならない事態にまでなったこと。その結果、シェアハウスのルームメイトたちにまで勘づかれたことだ。

 一番の懸念はディノの話でジェーンが記憶を取り戻すことだったが、本来の神話を聞かせた反応を見ても忘れたふりをしていることはないだろう。

 しかし、うれしい誤算もあった。


「ジェーンくんのほうからもディノくんに情を抱いてくれるとはね。嫌がってたわりに心を掴むなんて、ディノくんは天然なのかな。お陰でやりやすくなったよ。ふたりの絆を利用すればきっと、合意してくれるよね」


 ロンはジャケットの内ポケットから、小さな手帳を取り出す。ステージの照明を頼りに、十月のカレンダーを開いた。十月三十一日の日づけには、しっかりと赤い丸がついている。


「ジェーンくんの準備も整った。あとは……」


 隣の席に客がかけてきて、ロンは口をつぐんだ。手帳もゆったりとしまい込む。

 後方を見回してみると、特別観覧席は満席だった。その奥の立ち見区画も埋め尽くされているばかりか、規制線のロープ周りも二重三重に観客が詰めかけている。

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