表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
332/365

ディノとカボチャ男④

 寂しいからとか、同族だからとか、そんなものは関係ない。

 透き通るような肌、薄紅色の艶やかな唇、爪、やわらかな白銀の髪、すべてが夢のように美しかった。


「好きだ、ジェーン」


 名前を口にしただけで自然と笑みがこぼれる。ひと目見た時から心に宿った熱は、今もまだこんなにぽかぽかと照らしてくれている。


「隙間をあけたらあとは、柔軟加工してこじ開けたほうが早い。だいじょうぶだ。だいじょうぶ……」


 大きく深呼吸して壁の前に立つ。消すだけならガラス戸のほうが容易だが、おそらく下りられる足場はない。だからロンはバルコニー側をガラス戸にした。そういう男だ。

 呼吸をくり返すごとに、高めた魔力が足元から光となって舞い立ち風を喚ぶ。はためく髪に頬をなでられながら、ディノは超高密度壁に向かって一気に創造魔法を放った。

 その瞬間、激しい吐き気がのどを焼いた。堪える間もなく、胃の中のものを床にぶちまけて、ひざをつく。衝動を抑えるよりも、途切れそうになった魔力を持ち直すのが先決だった。

 しかし巡る魔力を体が拒否して、生命活動を阻害してでも止めようとしてくる。過去のトラウマによる創造魔法への拒絶反応だった。


「はあっ、はあ……! まだぐずる気か……。もうそんなこと言ってられねえだろ……!」


 再び込み上げてきたものを吐き出すと、ほとんど胃液だった。もうなにもないというのに、吐けと命じてくる体を引きずって、壁に近づく。

 下からかすかに水蒸気が立ち昇っていた。だがおかしい。物質変化速度が異様に遅い。いくら相手が宇宙起源時代の物質でも、体に負荷を抱えていようとも、指が通る隙間くらい一瞬で創れる自負がディノにはあった。

 予想より壁がぶ厚いのか?

 そう思ってディノは、胸をあえがせながらさらに一段階魔力を上げる。その瞬間、全身の倦怠感がビリビリと質量を肥大化させた。


「ぐっ、う……! これは……っ」


 自分の体を支えることもできず、床に横たわる。魔力に集中しようとすればするほど、電流にも似たしびれが体を裂いた。


「源樹イヴの、禁断の果実……っ。使ったのか、あの時……!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ