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ディノとカボチャ男①

「舞台よりも大切なものがある。想いはみんな同じっスよ」


 うなずくことも微笑むこともなく、ただ数瞬だけ視線を交わした。それだけで十分だと互いにわかっていた。

 ひとりじゃない。その思いが不安を溶かし、勇気を注いでくれる。

 今、ひとりぼっちでいるディノはどんなに、心細いだろう。




 * * *



『ディノくん。どうして保育園に行かないんだい』

『やだよ。こわいもん……』

『どうして?』

『だって、みんなオバケだもん……。ロンがいないとぼくは、ひとりぼっちなんだ……』

『おいで。僕以外にもね、ディノくんと同じ人がひとりいるんだよ。会わせてあげる』


 そう言ってロンが連れていった先にあんたはいた。


『きれい……。だれ?』

『きみの許嫁……いや、お嫁さんになる人ってわかる?』

『わかんない』

『じゃあ、ええと……。あ、ほらこの前読んであげた本に、王子様とお姫様が出てきたよね』

『うん』

『彼女はきみのお姫様だよ。そしてきみが王子様だ。いつかきみがここから彼女を助け出して、守ってあげるんだよ』

『……しあわせにくらして、めでたしめでたし?』

『ふふっ。そうだね。ずっといっしょに暮らすんだ』

『ずっといっしょにいてくれる……ぼくとおなじ、おひめさま……』


 その日からあんたに会うのが待ち遠しくなった。

 周囲の人間への違和感は拭えなかったが、俺にはロンとあんたがいればいいと吹っ切れることができた。あんたに会った時、恥ずかしくないように勉強も運動もがんばった。

 あんた、俺よりずっと大きかったからな。

 なのにいつの間にかあんたと同じくらい成長していた。そして見る見るあんたは小さくなって、俺はロンのウソに気づいた。


『あんたがずっと目覚めないのは、俺があんたの王子様じゃないからだろ』


 それでも。

 それでも、もう。心の焦げ跡は消せなくて、ヒリヒリと求めてしまう。


「そっかあ。お前はずうっと、あいつを見守ってくれていたんだなあ」


 思い出を映す夢の中に突然、知らない声が割り込んできて目を剥く。その男は大きなカボチャをかぶり黒いマントを背負って、俺の足元であぐらをかいていた。

 あんた誰だ?


「だったらお前に託してもいいかも。いやまあ、俺にはもうどうしようもないんだけど」

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