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ジェーンの秘策②

「うそっ。知らなかった!」

「たぶん園長と一部の従業員にしか知らされていないんだわ」


 驚くプルメリアと冷静に受けとめるカレンを横目に見つつ、ダグラスはグッと拳を握る。


「よし。そうとわかれば早い。午後もまたテキトーに理由つけて――」

「テキトーな理由だったんですかいロジャー様の腹痛はらいたは。へえ?」

「いだあっ!?」


 そこへ、ダグラスの背後から演劇部部長ジャスパーが顔をぬっと出した。ダグラスが振り返るよりも早く、青筋の浮かんだ鉄拳が見舞われる。

 頭を押さえてうずくまるダグラス越しに、ジャスパーはギロリとショーの主役たちをにらみつけた。


「お前ら今朝からなんかこそこそして、全然集中してないだろ! 今日が大事なグランドフィナーレだからじゃねえ! 観客とは一期一会。毎日が初公演で最終公演だと思えって話しただろ。そんなことも忘れちまったのか!? ああ!?」


 ジャスパーの怒号が稽古場に響く。気づけばピンと張り詰めた空気が場に満ちていた。他の演劇部員たちから、戸惑いや疑念の目が向けられる。

 その時、大扉が開いて誰かが入ってきた。


「ジャスパー部長、気合いが入ってるね。きみの声が通路まで聞こえてきたよ」


 ロンだ。楽しげな笑い声を弾ませて歩み寄ってくる。彼の通ったところから、冷ややかな空気が霧散していく。部員の中には、園長の姿を見ただけで安堵の表情を浮かべる者もいた。

 ジャスパーは驚いた様子でロンを振り返った。


「ロン園長。どうしたんですか。ここへ来るなんて珍しいですね」

「いや、どうしても今夜のショーが楽しみで仕方なくてね。思わず来てしまったんだ」


 部員だちがうれしそうに破顔する。さっきまで亀裂の入りかけていた士気が、さわさわと盛り返していくのがわかる。

 とんだ策士だ。ジェーンはひっそりと拳を握った。


「よかったら稽古を見学させてくれないかい。邪魔はしないよ」

「邪魔なんてそんな。でも午後はクリスマスショーのダンス練習にしようと思ってるんですよ。こいつらの身が入らないんで」


 そう言ってジェーンたちを見たジャスパーの視線を追い、ロンも振り向く。ロンはあからさまにジェーンに向けてにっこりと笑いかけた。

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