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ジェーンの秘策①

「今夜、ショーが終わったらここへ来なさい。ディノくんに会わせてあげるよ」

「ディノはガーデン内にいるんですね」


 すぐに返事はなかった。やはり素直に教えてはくれないか。そう思いながら様子をうかがってみると、ロンはどこか遠くへ目を向けていた。


「僕にとって彼は大事な人なんだよ。手荒なことはもちろん、医者だろうと他人の手に預けることはできるならしたくない。それに最初は使命感だったけれども、今ではすっかり親バカになっちゃったんだ」

「……だったらどうして、ディノの声に耳を傾けてあげないんですか」


 ロンはジェーンに向き直り、ごめんねと力なく笑った。幾筋もしわの刻まれたまぶたを持ち上げて、青緑色の目にガーデンの絵画を映す。


「このガーデンを完成させること。それだけが僕の存在意義だからだよ」


 そう言ったきり、思いを馳せるように絵画を見つめつづけるロンに、ジェーンは一礼して退室した。地下の稽古場を目指す。

 ここ以外、どこへも行く気はない。他人の手に預けたくない。ロンの執着とも取れる発言を考えれば、ディノは間違いなくガーデンにいる。

 そして、ロンが視線を向けた先にあるもの――。ジェーンは確信を抱いて、力強く地面を蹴った。




「ジェーン無事!?」

「どうだったっスか!?」


 稽古場の大扉を開けるなり、ジェーンはプルメリアに飛びつかれ、ルークに詰め寄られた。急くふたりをカレンはなだめて、ダグラスが隅のほうへうながす。


「俺たちはなんの手がかりも掴めなかった」


 悔しそうに顔をしかめ、ダグラスは視線でジェーンに問いかけてくる。ジェーンはさっと周囲に人がいないことを確かめ、声を潜めた。


「ディノはガーデンにいます。間違いなく」

「マジっスか。結構捜したんスけど」


 天を仰いで途方に暮れた声をもらすルークに、ジェーンは鋭く尋ねた。


「雲の城は見ましたか」


 それなら俺が、とダグラスが小さく手を挙げる。


「でも店内や画廊はもちろん、倉庫も隅々まで見たけどどこにも……」

「塔の上もですか」


 えっ、と一斉に声が上がり、みんなはジェーンを凝視する。


「塔の上は宿泊施設にするために改創作業がおこなわれているんです」

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