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裏神話④

「もちろん、ディノくんが望むなら園芸でもなんでも応援するよ。だけど僕の夢には彼が必要不可欠だ。そしてジェーンくん、きみもね」


 ソファに置いた手に触れられて、ジェーンはとっさに身を引く。しかしロンは手首を強く掴んできて逃がさなかった。いつの間にかひざが触れそうなほど詰め寄られている。


「だから私に養子縁組を……?」

「きみの才能は唯一無二だよ。僕はずっときみを待っていたんだ」


 さらさら離す気はない力を込めていながら、恭しくなで回してくる手が痛くて怖い。けれどロンのこの言動こそが、ジェーンを確信へと導く。

 ジェーンはロンの手を掴み返し、挑むように顔を突きつけた。


「では私が養子になる代わりにディノを解放してください」


 せつな、ロンはきょとんと目をまるめた。しかし瞬きのうちに、青緑色の目には興味深そうな光が差し込む。


「どうしてそこまでディノくんにしてくれるんだい?」

「ディノはシェアハウスの家族だからです。それに、助けてもらいました。何度も。なのに私は、なにも返せていません……」


 返すどころかまた、彼の言葉を信じきれずにいる。ディノは身の危険も顧みず伝えにきてくれたというのに、どうしようもなく不安で臆病な心は向き合おうとしなかった。

 このまま会えなくなるなんて絶対に嫌だ。今度は私が彼を助ける。


「そうか。うれしいよ、きみもディノくんを深く想いやってくれて。それじゃあ彼が退院したら、きみからも話してくれるかい。そのほうが彼も納得いくはずだ」

「ロン園長! もうウソをつくのはやめてください!」


 この期に及んでまだ白を切るロンに失望し、ジェーンは鋭く手を振り払う。ソファから立ち上がってロンと距離を取り、訴えた。


「あなたはディノが私になにを話したか察しがついているはずです! だからわざとディノを孤立させ私から引き離した! 入院も熱病もウソだと気づいています! ディノを返してください!」

「ふうん」


 そう言ってゆったりと足を組んだロンの声は冷たく、顔からは一切の感情が抜け落ちていた。組んだ手でひざを抱え、指でトンッと打つ。


「それで、その話をきみは信じたのかい? 記憶だってまだ戻ってないだろう。きみは受け入れたというの?」

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