ウソつきの告白④
「なにかの間違いではないんですか……。ロン園長は私にも、父親のように接してくれて……。私、どうしたらいいかわかりません……!」
「……だったら、俺とロンがあんたについたウソを話す。ロンの企みも」
「うそ……?」
ディノの顔を覗き込もうとしたら、彼の両腕が腰に回りきつく抱き締められた。幼子のように胸元に顔を埋めてすり寄せられる。
ジェーンは今さらながら耳が熱くなった。高鳴る心音に耳を澄ませるように、ディノはしばし沈黙する。それがますますジェーンの体温を上げた。
「突飛なことに聞こえるだろうが、今から話すことはすべて真実だ」
少しだけ顔を離し、しかし祈るように項垂れたままディノはぽつぽつと紡ぐ。
「この世界は一度、崩壊した。大地の国と大空の国による戦争で。人々は創造魔法を兵器製造のために使ったんだ。そしてついに、世界を滅ぼす爆弾を創り出し、二国がほぼ同時に放った。世界は、人間は、滅んだ。三人を除いて……。今俺たちがいる街は、神鳥アダムと源樹イヴがそれぞれ国を再現させたもの。そしてそこで暮らしている人々も……人間を模して創り出された生物だ。俺とロンは木族と呼んでいる……。ルークも、カレンも、プルメリアも――」
ディノはゆっくりと身を起こし、感情の見えない瞳にジェーンを映した。
「ダグラスも、人間じゃない……」
気づけばディノを突き飛ばしていた。尻を打った彼を挟むようにして、シャルドネの結晶のような刺が床から突き出ている。
それは黒く、毒々しい赤を内包して、ジェーンの早まる呼吸に合わせ鋭く明滅する。
「ディノ。いくらなんでも言っていいウソと悪いウソがあります」
「俺だって……俺だってウソだと信じたかった! でもこれが現実だ! 俺たちだけがそれぞれの神に守られて助かり、みんな死んだんだ……!」
「神ってなんですか! 私は真剣なんです! からかうならもう聞きたくありません!」
「聞く必要はない。思い出すだけでいい。あんたはおにぎりとかおでんに強く惹かれてただろ。それらは地食、大地の国の料理だからだ。食べたことのない味が珍しかったんだよ。それにバーベキューに行った時、山を見ただろ。どこまでもつづく広大な山脈が、全域入山禁止なんてあり得るか? あれは神々が木族たちにそう刷り込ませてるだけだ。ここら一帯から誰も出ないように。外にはなにもないから!」




