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ウソつきの告白③

「わかってるでも、それはロンの一面に過ぎない。悪い。わけはあとで話すから、とにかくガーデンを出よう」


 手首を掴まれて扉へ引っ張られる。しかしジェーンは力いっぱいディノの手を振り払い、あとずさった。


「無理です! 明日にはショーのグランドフィナーレがあるんですよ!? たくさんのお客さんが楽しみに待ってくれているんです!」


 弾かれた手を見たディノはせつな、痛みを堪えるように目を細めた。その表情があまりにも寂しそうで、ジェーンはとっさに顔を背ける。

 一時いっときの同情に流されてなどいられない責任が、両肩に伸しかかっていた。


「お客さんだけではありません。演劇部も整備部も広報部も販売部もみんな、期待してくれているんです。こんな私を必要としてくれているんです……! どんなことがあっても今、逃げ出すわけにはいきません」

「……あんたにたくさんの期待や信頼、それに今まで積み上げてきたものを捨てさせることだってのはわかってる。それでも頼む、ジェーン。俺を、信じてくれ」


 ディノはそっと手を差し伸べてきた。その仕草とは裏腹に、声も目もまるでジェーンにすがりつくようだった。

 ふと、目の前のそれが右腕だと気づいて、ジェーンの脳裏に赤い血の染みついたティッシュが思い浮かぶ。あの時ディノが傷の理由を隠したことは明白だ。枝で切っただけなら、あんな過剰に拒むことはない。

 嫌な予感に胸がざわめく。


「もしかして、腕の傷と関係があることですか?」

「……そうだ」


 違っていて欲しい。そう祈りを込めて、震える唇を開く。


「あの傷は、まさか、ロン園長に……?」


 ディノは答えなかった。ただ現実から目を背けるように、視線を横へ流した。

 その苦々しい表情がすべてを物語る。当然だ。血縁はなくとも、ディノにとってロンは唯一の家族。そんな相手から暴力を受けたなんて、信じたくはない。


「そ、んな……」


 急激に血の気が引く感覚がして、ジェーンはひざから崩れ折れた。すかさず駆け寄ってきたディノに抱きとめられる。

 ジェーンは夢中でディノを胸に引き寄せた。やわらかな黒髪をなで、鼻先で掻き分けるようにすり寄る。

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