家族になろうよ①
ディノは細く息を吐き出しながら、星がまばらに瞬く夜空を見上げた。
「……卑怯だろ。ダグラスがダメならじゃあ俺で、なんて。そんなんじゃなくて、もっとちゃんとジェーンから俺を見てくれなきゃ意味がない」
「あんたやっぱりジェーンちゃんのこと!」
ルークが詰め寄ってくる前に、ディノは足早に玄関扉へ向かう。
「ディノ! なんでそんな自分にまでウソつくんスか!」
迫ってくるルークの声を扉で遮る。エントランスホールを突き進みながら、ディノは固く拳を握り締めた。
「なんで? 俺の本音はあいつを傷つけることしかできないからだよ……!」
行き場のない想いを叩きつけるように、ディノは目の前の扉を勢いよく開けた。
「どういうことだ。養子ってなんだ。今度はなにを企んでる」
ディノは扉を開けるなり、執務机に座っていたロンに掴みかかった。力で立ち上がらせ、本棚に押しつける。それでも義父は顔色ひとつ変えない。
「何度も言ってるじゃないか。ハロウィンの夜、強行手段に出ると」
「今日はまだ二十九日だ!」
「僕にもいろいろと準備があるんだよ。なるべく穏便に済ませるなら特にね。ディノくんにはもっと長い猶予をあげたんだ。これくらい大目に見て欲しいね」
「ふざけるな……!」
まるでゲームでも楽しむかのように薄ら笑いを浮かべるロンに、衝動的に拳を振り上げる。しかしその瞬間、休みの度に駅前のクレープ屋でいっしょにクレープを食べた義父の笑顔が過った。
次第に胸に不快感が広がっていく。のど奥から吐き気がせり上がってきて、ディノはロンの胸元から手を離した。
「慣れないことはしないほうがいいよ、ディノくん」
「なんで……養子なんか……!」
大きく息を吸い、不快感をやり過ごしながらロンをにらみつける。義父はにこりと笑って、手を後ろで組みゆったりと窓に近づいた。
「寂しいじゃないか。いくら捜したってジェーンくんの両親は見つからないんだから。兄弟も、親戚も、友人も。彼女はひとりぼっちだ。だから僕たちが家族になってあげるんだよ。そのほうが自然でもあるだろう?」
「わからないなっ。あんたの目的の妨げにしかならないんじゃないのか」




