表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
290/365

ディノの隠しごと③

「そんな大げさなものじゃない。かすり傷だ。だからあんたもダグラスたちに話して騒いだりするなよ」

「本当にかすり傷で、適切な処置が施されているなら黙っています。見せてください」

「やだ」


 間髪入れず拒否するディノにムッとして、ジェーンは机に網かごを置きに向かった。そのかたわらにあるゴミ箱に目が留まる。

 中にはさっきの紙袋といっしょに、消毒液の容器やばんそうこうの箱が捨ててあった。

 まさか、昨日や今日にできた傷ではない? いつから?


「おい。ここを開けろ」


 ジェーンがゴミ箱に気を取られている隙に、扉へ向かったディノが苛立たしげに鉄の覆いを引っ掻く。


「傷を見せてください」


 その右腕にジェーンは手を伸ばした。しかし一拍早く逃げられてしまう。ジェーンはめげずに詰め寄る。腕を高く上げて身をひねるディノにしがみついた。


「しつこいな。処置は自分でしてる。問題ない」

「いいえ! 確認するまでは安心できません!」


 突っぱねられる力が増せば増すほど、むきになっていく自分を止められなかった。自分が腹立たしかった。忙しさと疲れに流されて、こんなにも近くにいるディノの身に起きていることに、気づけなかっただなんて信じられない。

 ショーの稽古に夢中になったり、反響に歓喜したりしている間に、ディノはひとりきりで耐えていた。たとえそれがささいな痛みだったとしても、飲み込むという選択肢を取らせてしまった自分が許せない。


「だからっ、構うなって言ってるだろ! そういうのがウザいんだよ!」

「きゃ!?」


 片腕で突き飛ばされ、ジェーンは机に背中を強かに打ちつけた。衝撃で落ちてきた網かごが肩に当たり、クレープが床へ散らばる。


「だいじょうぶか!?」


 えっ、と目を起こすとひどく慌てたディノの顔が目の前にあった。肩にそっと触れた褐色の手を夢中で握る。

 やっぱりディノはやさしい。どんなに意地悪でウソをつかれても、重ねた手はこんなにも暖かい。


「私よりあなたです」

「……俺は平気だ」


 床に散らばったスイーツを手に取り、それがなにか気づいたディノの目がわずかに見開かれる。若葉におだやかな光が差し込んで、揺らめいた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ