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ディノの隠しごと②

 自分の名前が耳に飛び込んできて、弾かれるように振り返る。部屋にダグラスかルークでも来ているのか。そして自分のことでもめている?

 ジェーンの決心は固まった。自分の問題でルームメイトをわずらわせるなんて情けない。それに扉の向こうでぐるぐるしていたって、ディノの気持ちを聞くことはできない。


「ディノ、失礼します!」


 拒まれても話がしたい。そう意気込んでいたジェーンは、返事も聞かずに部屋へ踏み込んだ。

 目を見開いたディノと視線がぶつかる。軽く室内を見回して、ジェーンも目をまるめた。部屋にはディノしかいない。個人用電話機がある様子でもない。

 静かに混乱するジェーンから、ディノはさっと袖を下ろして右腕を隠し、舌打ちした。


「……風呂に入ってくる。そこをどけ」


 ベッドにあった着替えを掴むなり、ディノはジェーンを押しのけて出ていこうとする。

 しかしジェーンは気づいてしまった。ベッドサイドのテーブルに、赤い染みのついたティッシュが置かれていることに。


「待ってください! 行かせられません。怪我してるんですよね? 治療は!?」

「構うな。そう言ったよな」

「わ、私は、了承していません」

「ジェーンちゃん? なんかあったんスかあ?」


 そこへ、向かい部屋のルークがひょこりと顔を出した。するとディノはあっさり身を引いて中に戻る。よくわからないがこの好機を逃す手はない。


「いえっ、なんでもありませんよルーク! ちょっとディノとお話をしたいだけですので、お気遣いなく!」

「え、部屋で? それならリビングですれば――」


 ごめんなさい。心でルークに謝りながら、ジェーンは扉を閉めた。後ろ手にそろりと鍵をかけて、つまみを鉄で覆う。

 ディノはサイドテーブルのティッシュを紙袋に入れていた。それをねじり潰してゴミ箱に投げ捨てる。ルークにも、ルームメイトの誰にも傷を悟られたくないようだ。


「その傷は、どうしたんですか」


 ジェーンはディノの右腕を注視した。袖で隠した下に傷があるに違いない。見たところ動きに違和感はなく、ディノも涼しい顔をしていた。


「別に。枝でちょっと切っただけだ」

「ディノがですか? そんなミスをするとは思えませんが。だったら、救護室で診てもらったんですよね」

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