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It's show time⑤

『はちゃめちゃに最高だぜえーっ!』


 四人が一斉に親指を立てた瞬間、演劇部員たちは歓声に沸く。興奮したラルフとレイジがその中に飛び込んでいって、集団は円陣を組みぴょこぴょこ跳び跳ねはじめた。


「別部署同士がこんな喜び合えるとはなあ」

「ああ。もっと早く手を取り合うこともできただろうに、そういう気持ちをいつの間にか忘れていた」


 円陣から一歩離れたジャスパーとニコライの会話が聞こえて、ジェーンはアナベラを思い出した。

 整備部はなんでも屋のようにこき使われている。そう思ってどこか他部署と壁を作ってしまっていたのは、アナベラの責任だけではないかもしれない。

 思考を止め、手を取り合える未来を想像しなかった。それは誰にも縛られることではない。自分自身が鍵をかけてしまっているだけだ。


「ダグ」


 ジェーンは円陣に誘われて苦笑しているダグラスに歩み寄った。


「私を信じてくれてありがとうございます」


 ダグラスは目をまるめて、ジェーンを見つめた。しかしすぐに、ゆるく首を横に振って微笑む。


「ジェーンが俺を信じてくれたからだよ。だから迷わずに動ける。俺のほうこそ、ありがとな。その、これからもよろしく」


 気恥ずかしそうに言うダグラスに、ジェーンはくすりと笑ってうなずく。すると額を指先で弾かれた。くすぐったいくらいの感触だ。ますます笑みがこぼれると、ダグラスもはにかむ。

 ほら、やっぱり。想像すれば彼とだってまた笑い合える。


「ジェーン!」


 ふいに、カレンに抱きつかれてジェーンは目をぱちくりさせた。今のカレンは普段と真逆で露出の多い衣装に濃いめの化粧、サイドをきつく巻いた紫のウィッグをつけているからどぎまぎしてしまう。

 舞台では冷たく刺々しかった青い目は、ジェーンを映してやわらかくほころんだ。それも反則だ。


「私からもお礼を言わせて。ジェーンとシャルドネが私に新しい道を教えてくれたわ。今日、お客さんの反応を見て確信したの」


 カレンは身を離して、ジェーンの目をまっすぐに見つめる。カラーコンタクトでは隠せない、少女のように純粋な光が瞬いていた。


「誰かになる必要はない。私は私の持っているものを磨けばいいのよ! それが唯一の、誰にも負けない武器になる」

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