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It's show time③

 それぞれの仮装を揺らして観客は音の波に乗る。ロジャー王とジュリー女王に手を引かれて、シャルドネも宴に巻き込まれる。

 陽気なダンサーたちに煽られて手を振り、跳び跳ねて、創造と魔法の世界へ迷い込む。男の子も女の子も、お父さんもお母さんも、散歩に来たおじいさんも花が好きなおばあさんも、過去を忘れて今の夢を見る。

 のんきな楽園の住人たちに、紫黒のドラゴンも呆れたため息をついた。

 音楽が鳴り止むと同時に、放たれた花火が夕闇の空へ歓声の風に押し上げられる。そして弾ける光と音が、拍手喝采する人々の笑顔を照らし出した。


「えっ、もう二十分経ったの? うそお。楽しくてあっという間に終わっちゃった!」

「今年は仕かけがすごかったな。特にあの攻撃! あんなに速い創造魔法見たことない!」

「決めた! 私絶対、来年はシャルドネの仮装する! もう一回見て衣装の写真撮らなくちゃ」

「おじいちゃん、プリン食べたい! ネコちゃんのプリン!」


 最後のダンサーが見えなくなるまで手を振り見送った観客たちは、ショーの余韻を楽しむように多くがその場に留まった。ステージに残された黒水晶の写真を撮ったり、ただ眺めたり、ショーの感想を夢中で話す客もいる。

 それは閉園時間を知らせる音楽と放送が流れてもつづいた。まだたくさんの客が黒水晶に集まっている事態に、舞台監督兼脚本家は頭を掻く。


「仕方ねえ。閉園時間になったら水晶の光を落とすぞ」

「了解です」


 白髪の演出担当は時計とにらめっこした。そして秒針が四十秒を指したところを見計らい、黒水晶が内包する紫の光を明滅させる。

 その瞬きは徐々に弱くなり、ゆっくりと暗くなる。午後五時〇分〇秒。ガーデンの門が閉ざされる時間とともに、黒水晶は完全に沈黙した。


「あー。消えちゃった……」

「もう閉園だもんな。また来ようぜ」

「うん! いくいく!」


 惜しむ声をぽつりぽつりこぼして、人集りはほどけていく。原っぱから人気ひとけが遠ざかったのを確認して、監督と演者担当は安堵の笑みを交わした。


「ジェーン! やべえ! お前やばいな!」


 と、その時背中に強烈な一撃が見舞われて、ジェーンは舞台袖の床に沈んだ。


「わっ。ラルフさん、加減を考えてくださいよ……!」

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