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パジャマパーティー③

「私は今一度、自分を見つめ直してみようと思います」

「え……。それってどういうこと?」


 プルメリアは頭を持ち上げた。その時ジェーンの指が上かけをきつく握り締めていることに気づき、息を詰める。


「ダグへの想いに区切りをつけたんです」


 ベッドがきしんだ。カレンもひじをつき起き上がっていた。ふたりから見下ろされても、ジェーンはひたすらまっすぐな目で、ひとつひとつの言葉を確かめるように紡ぐ。


「私の中にわずかに残った記憶は、不可解で謎だらけです。それらを整理しない限り、私は前に進めないとわかりました。私は、私を知らないと、好きな人に正々堂々好きですと言えないんです」


 だからプルメリア、と振り向いたジェーンの目が大きく見開かれる。驚いた顔がみるみるぼやけていって、プルメリアはさっと目を拭った。

 けれども涙は、あとからどんどんあふれてくる。


「プルメリア……? どうして泣いているんですか」


 そっと髪をなでてくれたぬくもりに身を寄せる。自分よりもずっと、もっと、苦しくて辛いジェーンの前で嗚咽なんてこぼせなかった。押さえつけられた感情が中で暴れているかのように、体が震えはじめる。

 それをなだめてくれたのは、後ろに回って抱き締めてくれたカレンの手だった。


「わかる、からっ。ジェーンの、きもち……っ。同じひと、好きになって、よろこんだり落ちこんだり、私も心がぐちゃぐちゃでいっぱいだった。だからわかるの……! ジェーンがどんなに苦しいか……! その決断がどんなに悔しくてっ、どれほど……!」


 堪らなくなって、プルメリアは涙の雫を散らしながらジェーンに抱きつく。


「ダグが大好きなんだね……! だからちゃんと向き合いたいんだよね……! そうじゃないと、彼を不幸にしちゃうから……!」

「ぷるめりあ……っ!」


 おそるおそる背中に回された手が、しがみつくようにネグリジェを掴む。プルメリアは少しの隙間もないようにジェーンを抱き締め直し、肩を濡らすあたたかな雨を受けとめた。

 上かけを持ったカレンが、プルメリアとジェーンを包み込んで引き寄せてくれる。彼女の目にもわずかに涙が浮かんでいた。

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