表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
258/365

ジェーンの失敗③

 そこへわらわらと倉庫に入ってきたのは、パレードを終えた演劇部員たちだ。クリスはあっという間にダンサーたちに囲まれて、衣装の説明を求められたり採寸をせがまれたりしている。

 中には「過去最高のでき映えだ!」と称賛する声もあり、ジェーンはクリスの耳が赤くなっているのを見つけてくすりと笑った。


「私の衣装はこれかしら」


 その時、シャルドネの衣装をなでる手があった。ジェーンはハッとして振り返る。メガネ越しに衣装を検分していた目がジェーンを映して、微笑んだ。


「カレーン! オーディション合格したんですか!?」


 思わず飛びついたジェーンを、カレンは抱きとめてウインクしてみせた。


「ばっちりよ」

「カレン先輩改めておめでとうっスううう」


 寝起きのゾンビのような声で割り込んできたのはルークだ。どう見ても祝っているとは思えない悲愴な面持ちに、ジェーンは引きつった笑みを浮かべる。


「ど、どうしたんですかルーク」

「いや、ちょっと……」

「自分だけ着ぐるみなのが寂しくなっちゃったんだよね、ルークくんは」

「プルメリアあああ!?」


 せっかく飲み込もうとした言葉をプルメリアにスパッと言われ、ルークの悲鳴が響き渡る。役者として顔の見えない着ぐるみ役であることを、ルークも気にしていたようだ。


「まあまあ。部長は来年、敵役増やすかもって言ってたじゃんか。チャンスはあるよ」


 顔を覆い、さめざめと泣くまねをするルークの肩をダグラスが励ます。そのやさしい声に、アメジストの瞳に、姿に、ジェーンは胸が詰まってとっさにうつむいてしまった。

 なにやってるの。いつも通りに振る舞わなきゃ。

 頭ではわかっていても、重苦しい心が顔を上げろという命令を拒む。


「おっ。これってもしかしてロジャー王とジュリー女王の衣装?」


 衣装に気づいたダグラスに、ジェーンはうなずき返すのが精一杯だった。

 彼は今、どんな目で私を見ているんだろう。思い出をねつ造し、家族の名前なんて個人情報まで知っている女。妄想の激しいストーカーと思われていても仕方ない。

 ダグラスの様子は普段と変わらないように思えるが、逃げ出してしまったジェーンには彼の本音がわからなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ