ジェーンの失敗②
ジュリー女王の衣装は、シャルドネと色やスリットの入れ方を変えただけのように見える。ロジャー王のほうもベルトをふんだんに使ったデザインや、襟と袖口の形は同じだった。
「メインの三人はあえて大きく変えないで、統一感を出したんだ。舞台の立ち位置がだいたいロジャー王を真ん中に、シャルドネ、ジュリー女王ってなるから、このほうがバランスいいと思って」
「確かに、シャルドネとジュリー女王が対称的でいいですね。それに脚本ではロジャー王がシャルドネの心に寄り添おうとしていましたから、似た姿になるのは納得です」
そう返したとたん、クリスは胸を押さえて大きなため息をついた。ほころんだ頬を、ちょっとだけ照れくさそうな笑みで染めている。
「よかった。凝ったダンサー衣装よりこっちのほうが心配だったんだ」
「メインでもありますもんね。でもジャスパー部長からも合格をもらっているんですよね?」
「話は通してあるよ。だけど、なんだか怖くなっちゃって。実物はまだ見てもらってない。でもジェーンにいいって言ってもらえて勇気出たよ。ありがとう!」
パッとジェーンの両手を握ったクリスの手は冷たくて、少し震えていたように思う。
ハロウィンの最大の目玉は仮装だ。観客はいつも以上に演者たちの衣装に期待し、注目するだろう。その思いをクリスは一身に背負っている。
ジェーンはダンサーの衣装創りを手伝わせてくれたクリスに感謝しながら、しかと手を握り返した。舞台と衣装、担当は違ってもジェーンとクリスは整備部という仲間だ。苦楽を分かち合いたい。
「手伝えることがあったらまた言ってください。いっしょにショーを創りましょう。そして観てくれた子どもたちが、いつかは自分もあそこに立ってみたいと思えるような舞台にしましょうね!」
クリスの目にひらりと輝きが映り込む。子どもだった彼はこんな目をして、ガーデンのショーを見ていたのだろうか。
大きくうなずいたクリスとどちらからともなく笑い合う。彼の笑った顔は、無邪気な少年そのものだった。
「あ! 楽しそうな声がすると思ったらここにいたんですね」
「きゃあ! ハロウィン衣装できてる! めっちゃかわいい!」
「へえ。さっそく着てみたいなあ」




