衣装創り②
丸い宝石、いやアメ玉だったものがクリスの指に操られ、枝分かれしていく。
「どう? クラゲ海賊とキャンディのモチーフだよ」
財宝を求める海賊と、宝石のようにキラキラしたアメの組み合わせは文句なしだった。加えてクラゲの触手を再現した衣装は、ハロウィンらしいおどろおどろしさも出ている。
「いいですね! でもキャンディの宝石はもう少しくすんでいるとそれっぽいかと思います」
言いながらジェーンは帽子に向かって指を振る。つぼみ型のキャンディは濁った青をまとった。ついでに頭頂部に少し白を加える。
華やかさは減ったが、ソーダ味のおいしそうな帽子になった。
「なるほどね。それじゃあ肩のところにラメを入れて見映えをよくしようかな」
クリスがパチンッと指を鳴らすと、砂糖のような銀粉が降りかけられた。
ジェーンはクリスといっしょにマネキンの周りを回って、細かな装飾やキャンディの宝石を足したり消したりした。
「次は私が創ってもいいですか?」
残りのデザイン案を手にジェーンは尋ねる。
ちょっとだけじれったくなっていた。クリスはひとつの宝飾に色や角度などいつまでもこだわっている。これでは時間がいくらあっても足りない。
「あ、お願いしていい? 僕があとで仕上げるから」
クラゲ海賊に目が釘づけのまま、返事が寄越される。その顔は真剣ながら、青い目は子どものように輝いていた。衣装創造にかけるクリスの情熱を感じる。
だからこそ遅れて慌ただしくなる事態は避けてあげたい。
「えっと、次はコウモリのドラキュラとチョコレートね」
デザイン案に目を落としつつ、マネキンに向かって魔力をほとばしらせる。きらりと輝く糸が首元を舞い踊り、みるみるとドレスブラウスを描いていく。
それと同時にジェーンは香り高いカカオを想像しながら、ダークブラウンのパンツを縫い上げた。
そしてマネキンの上でチョコをテンパリングするようにマントを広げ、ふわりとかける。コウモリの羽をまねていくつかアーチを描き、チョコが垂れるように先端に丸みを持たせる。
胸元にはホワイトチョコのスパイラル細工と、ルビーチョコの花を添えた。
仕上げに真っ赤なリボンタイを巻けば完成だ。
「うーん。少し物足りないような……」




