表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
253/365

衣装創り①

 クリスに顔を覗き込まれて、ジェーンは今朝の夢から意識を引き剥がした。けれど、頬が重く感じてうまく笑えない。

 クリスにもますます眉をひそめられて、誤魔化すことは諦めた。


「すみません。ちょっと寝不足です」

「ハロウィンショー本番まで一ヶ月切ったのに、衣装まだできてないばかりか手伝わせてすみませんね」

「え。ええ!? 違いますよっ、そんなつもりで言ったんじゃありません……!」


 慌てるジェーンを見てクリスはにやりと笑った。


「まあ半分冗談だけどさ。はじめての衣装担当でしかもハロウィンだから、やりたいこといろいろあって決められなかったんだ」


 稽古場と隣接する倉庫の床に座り込んだジェーンの前には、クリスが描き溜めたデザイン案の数々が広げられている。

 その中からいくつかのテーマを紹介され、ジェーンはどれも素敵だとうなずいたのだが、クリスには強いこだわりがあるらしい。

 決まりかけた案を取り下げては、ああでもないこうでもないとつぶやくのをくり返していた。


「私はジャスパー部長の脚本に沿うだけですが、クリスはゼロから考えているんです。大変なのも悩むのも当然ですよ」

「よし。これに決めた!」

「って言ってるそばから!? どれですか」


 クリスは散らばったたくさんの紙からひとつをつまみ上げる。それはお菓子と動物をモチーフにしたデザイン案だった。


「シャルドネがドラゴンだから、動物でそろえるといいと思うんだ」

「なるほど。それは名案です! ジャスパー部長もきっと気に入ってくれますよ」

「ありがとう。今から試作を創ってもいい?」


 ジェーンは返事の代わりにマネキンを数体創った。

 まずは男性ダンサーの衣装だ。クリスはシンプルな白いシャツに、くすんだ青いパンツと黒のブーツを創った。

 そしてその上に青いロングコートを滴らせる。その裾はたくさんの支流に分かれた。ひとつひとつがぷっくりと厚みを持ち、フリルを生やしてひだを作る。

 フリルは赤紫色で、ジェーンはなにかの触手に見えた。頭をバラのつぼみに見立てたローズカットのようにきらめく帽子が覆い、左右と後ろからまた触手が生えてくる。


「あとは眼帯と、胸元にキャンディの宝石かな。あ、サンゴ型とかいいかも」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ