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変化する夢Ⅱ

 すべての窓は板を打ちつけ、塞がれていた。外に繋がる扉は特に厳重に、鎖までかけられている。夢の中のダグは「怖いものが入ってこないためだ」と言った。だけどジェーンは本当かしらと思う。

 ダグはベッドの上でジェーンを後ろから抱き締め、耳に吹き込めてくる。


「外に出ちゃダメだよ」


 しがみつくような力で身動きを封じて、甘い吐息でくり返しささやく。


「ここにいて。どこにも行くな」


 まるでジェーンを閉じ込めたいかのようだ。振り返ろうとしたわずかな動作さえ、手首を掴まれて咎められる。

 外では強い風が吹いているのか、時折窓がガタガタと揺れた。


「ダグ、怖いものとはなんですか」

「俺ときみ以外のもの。きみ以外はいらないから」

「私は誰ですか。きみではなく、私の名前を呼んでください」

「甘えたいの? かわいいな。ずっとそうして俺だけを見てて」


 頬をなでた指があごにかかり引き寄せられる。ジェーンはとっさに顔を背けた。しかし後頭部に回った手がそれを許さず、強引に唇を重ねられる。

 ジェーンは胸板を押し返した。抵抗すればするほどダグは口づけを深め、丹念に味わう。

 息苦しさにジェーンの体から力が抜けてきた時、ようやく解放された。

 熱と欲望を隠そうともしない瞳に絡め取られて、めまいがしそう。現実のダグラスはこんな目でジェーンを見ない。欲しがってくれない。甘い夢に溺れてしまいたい。

 だけど、自分だけが写っていない写真に、この幸せを否定される。


「この夢は夢でしかないんですか。ダグとの思い出は、私の夢想ですか」

「なにを言ってるんだ。中学の卒業式、きみが告白してくれて恋人になれたんだ。それからこれまでの日々は、確かに夢のように幸せだった。だけど夢想なんかじゃないよ。もちろんこれからだって。きみを愛してる。何度だって伝えるから、不安な時はいつでも言って」


 熱を分け与えるように額にキスを落としたダグに、ジェーンは微笑みを返した。しかし、愛をねだる言葉は出てこない。まるで薄布を隔てているかのように、彼のぬくもりを感じられなかった。


「もう、なにを信じればいいのかな……」

「ジェーン? どうしたの。今日はなんだかボーッとしてるんじゃない?」

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