表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
250/365

ウソつき④

 ハッと我に返り振り向く。慈愛の色を目に湛え、深い理解の微笑みを浮かべたロンがいた。

 車は赤信号で停止している。


「やめろ。いいんだ、もう。知らないほうが幸せな真実だってある。ジェーンをそっとしておいてやってくれ」

「ふうん? でもどうやらジェーンくんは、ダグラスくんとケンカでもしたみたいだよ。ボートから降りたジェーンくんは逃げるように走り去ったからね」


 いたずらめいたロンの笑みを見てしまった瞬間、まだ強く引きつけられている自分の心に気づかされた。そして、ロンが次になにを言うかわかってしまう。

 それはディノの頭に響いた声と同じだ。


「チャンスなんじゃないかい」

「うるさい! あんたは別の目的のために俺とジェーンを利用しようとしてるんだろ。俺は駒になるつもりはない! 諦めてくれ」

「……そうか。きみがそこまで言うなら仕方ないね」


 そう言うなりロンは大胆にハンドルを切って、対向車線へと向きを変えた。よろめいたディノは、ロンから物々しい空気を感じ取り凝視する。


「ロン、どこに行く気だ」

「ん? シェアハウスに帰るんだよ。きみとの話はもういいからね」


 声も表情も平生と変わらないが、ディノには父が知らない仮面をかぶっているように見えた。


「もういいってなにを企んでる。諦めたわけじゃないだろ!」

「きみのことは諦めたよ、ディノくん。きみがよかったけれど、かわいいひとり息子に嫌われるのは僕も辛い」

「じゃあジェーンは!?」

「彼女には別の男をあてがうことにする。ああ、ダグラスくん以外のね。彼ではダメだ。意味がない」

「別の男だと……! ジェーンをなんだと思ってんだ! ふざけるな! そんなことさせるか!」


 息子が激昂げっこうし掴みかかることを、父は予想していたのだろう。運転が乱れる前に車を路肩に停め、サイドブレーキをかける。

 服を引っ張る乱暴をやめさせることもなく、ロンは微笑んでいた。


「それが嫌だと言うならきみが相手になればいい。僕もそっちのほうがうれしいんだ。全力で応援するよ」


 止めに入るよう仕向けられたのだと気づいて、ディノは突き飛ばすように手を離した。


「あんたの企みがわからない以上、話に乗るわけにはいかない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ