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ウソつき②

 過ちに失望するディノの手を振り払って、ジェーンは鋭くにらみ上げてくる。そこにははっきりと憎しみと恨みが宿っていた。


「ウソつき」


 閉まった扉の音は彼女の拒絶だった。

 ダグラスの大事な話がなんだったのかはわからない。けれど自分はひとり先走り、大きな勘違いをしていたのだろう。間違った努力がジェーンを傷つけた。

 だがそれ以上に、ジェーンに突きつけられた眼差し、浴びせられた言葉、拒絶の音が胸をえぐる。痛みを訴えるそこをディノはぐしゃりとわし掴みにした。


「なんだよ。嫌われるのは好都合だろ……」


 その時、車のクラクションが軽く鳴り響いた。ディノは気に留めなかったが、もう一度鳴ったそれが近くだと思いゆるゆると目を向ける。

 シェアハウスの敷地前に一台の車が停まっていた。助手席側の窓が開いて現れたのは、ロンだった。ロンは視線でディノを呼んでいた。


「今は話す気分じゃない」

「乗りなさい」


 近づくなり、ロンはぴしゃりと言ってきた。そしてさっさと助手席側のドアを開ける。


「少しドライブをしようか、ディノくん」


 ただ車を乗り回すだけでは済まないとディノはわかっていた。ガーデンで周囲を警戒していた時にロンの姿は見当たらなかったが、必ずどこかで見張っていると確信していた。

 重苦しい車内に乗り込む間際、ディノはシェアハウスを振り返った。玄関に近い二階の窓がジェーンの部屋だ。彼女はそこでひとり泣いているのだろうか。

 だけどこの手は涙を拭うどころか、もう傷つけることしかできない。


「きみは僕に言ったよね」


 源樹イヴを囲むように創られた幹線道路に入ってから、ロンは口を開いた。


「ダグラスくんを噛ませ犬にして、ジェーンくんとデートするって。だけど僕の目には、きみがふたりの世話を焼いているように見えたけど違うかい? なぜ、最後ひとりで帰ったのかな」


 ディノは黙るしかなかった。当初の予定ではジェーンとダグラスは恋人になったと言って、ロンを諦めさせるつもりだった。

 しかしジェーンのあの様子を見る限り、計画は失敗に終わったと考えざるを得ない。


「ディノくん。きみが友だち思いなのは悪いことじゃないよ」


 ロンは態度を改めて、やさしく諭す口調で言う。

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