表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
243/365

大事な話①

「ディノ。あの、無理に帰らなくてもいいですよ。私は三人でも十分に楽しめてます。最初はちょっとびっくりしちゃいましたけど、でもディノがいてくれると――」

「ダグラスはあんたに大事な話があると言っていた」

「えっ」


 ドキリと胸が高鳴り、思わずまじまじとディノを見上げる。しかし彼はジェーンを拒むかのように体ごと顔を背けた。


「だからデートに誘ったんだ。わかるだろ、この意味。あんたも……素直な気持ちを話してやればいい」


 ディノはそのまま足早に行ってしまった。かけられた言葉は間違いなくジェーンの背中を押すものだった。けれど励ましの手になぜか突き放される感触を覚える。

 彼はまたウソをついているの? たとえそうだとして、一体なにができるだろう。大事な話に目がくらんで一歩も動けない私に。


「あれに乗ろうか」


 池を囲む大通りに戻ってきた時、ダグラスはそう言って指をさした。その先には宙に浮かぶ星くずの川がある。ボートに乗って大通り沿いを一周できる〈ミルキーウェイ〉だ。

 空気を固めて創った溝に光の水がたゆたい、その上を泳いでいくボートは本当に空を飛んでいるかのようだ。通りに架かる橋の下では、オールで押し出された光の滝を浴びて、子どもたちがきゃたきゃたと笑っている。


「おや、ロジャー様。お忍びデートですか。いってらっしゃいませ」


 案内係がダグラスに気づいて茶化してきた。知り合いだったのか、ダグラスは「ばーか」と笑って悪態をついたけれど、デートは否定しなかった。

 それがうれしいやら、ますます緊張してしまうやらで、ジェーンはハンドバッグをぎゅうと握り締める。

 ダグラスの持ったオールが光の水を掻き、舟はゆっくりと滑り出す。陽光には少しだけ黄金こがね色が混じり、ガーデンをあたたかく照らしていた。光はパシャンと衝撃を受けると、銀や青の星型に変わり繊細に瞬く。

 ジェーンはすくってみようとしたが、手で掴めない。水音はするのに濡れもしない。

 夜空に架かる星の光を川にたとえた、人々の想像を実現させる力。自分も創造魔法士でありながら、ジェーンは時々とても不思議な心地に駆られた。


「きれいだな、本当に」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ