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ダグラスと合わせ稽古⑤

 へりに腰かけ、ダグラスは横をぽんぽん叩きジェーンを誘う。当然のように隣を許してくれる彼が愛しくて、ジェーンは甘く震える胸を隠しながらそっと寄り添った。

 ところがダグラスはそっぽを向いて、どこかそわそわしている。いつもならすぐに明るく話を振ってくれる彼なのに、なんだかこちらまで落ち着かなくなる。

 いやいや。ジェーンは頭を振って自分を鼓舞した。ダグラスとふたりきりになれる機会なんて滅多にない。めげずに話しかけないと!


「カレンたち、もうすぐ戻ってくるでしょうか。そうしたらさっきのシーン、みんなでやりませんか?」

「あああっ、ジェーンあのさ! ガーデン回ったことある!?」


 唐突な切り出しにジェーンはきょとんと目をまるめた。とても強引な話題転換を不思議に思ったが、とりあえず首を横に振る。

 するとダグラスはパンツのポケットから、少し折れ目のついた紙を取り出した。


「じゃあさ、今度休みが重なった日にいっしょに行かない? チケットもらったから、あの、ちょうどいいかなと思って」

「ガーデンのチケットですか!? うれしいです! みんなで回ったら絶対楽しいって思ってたんですよ! ……あれ。でもダグたち全員が休んだらパレードやイベントが……」


 全員の休みが重なる水曜日は、ガーデンの定休日だ。ルークはダグラスの、カレンはプルメリアの代役でもあり、ガーデン開園日にルームメイト全員が休みを取るのは無理な話だった。

 どういうことか、ダグラスを見ると彼はあからさまに目を泳がせた。


「その……チケット、みんなの分はないんだ。だからみんなにはナイショ」


 唇に人さし指を立て、ダグラスは眉を下げてへらりと笑う。ジェーンはとっさに口元を隠した。思わず上がる口角を止められない。

 だからカレンたちが戻ってくる前に、私だけに伝えたかったんだ。

 そう思うとますます頬がゆるんだ。プルメリアのことを考えると少しの罪悪感を覚えたが、それも身を震わせるほどの歓喜の波に押し流される。


「ナイショですね! わかりました。楽しみにしてます!」

「よかった。俺も楽しみだよ」


 受け取ったチケットを両手で慎重に持ち、ジェーンは恍惚こうこつのため息をついた。

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