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ダグラスと合わせ稽古①




 * * *



 ジェーンはダグラスとにらみ合っていた。

 場は指先ひとつでも動かせば、首を掻き切られそうな緊迫に満ちている。ダグラスからはじめて突きつけられる殺気に、ジェーンは知らず知らず渇いたのどをつばでうるおした。

 その瞬間、ダグラスが動く。間髪入れずジェーンも反応し、腕を振り上げる。


「こう来たら、こう!」


 ダグラスはジェーンの手から放たれた結晶魔法――を想定して、横へ体を捌く。


「はい! 次はこう行きますので」

「こう避ける、だな!」


 ダグラスが避けたほうへジェーンが手をかざすなり、彼は華麗なターンを決めながら詰め寄る。

 こうした立ち回りのあるショーははじめてだと言っていたが、ダグラスは難なく要領を掴んでいた。戦いながらも優雅に! 美しく! と無茶に聞こえたジャスパーの注文にも応えている。

 素晴らしい順応を見せるダグラスを拍手で称えるジェーンの胸には、〈しゃるどね〉とかかれたゼッケンがかかっていた。


「すごいです! もう動きはバッチリですね!」

「いや、まだ実際にジェーンの創造魔法を受けてみないと。次は本当に魔法を使ってやってみようか」


 床に放ってあったタオルでダグラスは滴る首の汗を拭う。

 衣装は身につけず、白のシャツに黒のパンツ姿だ。それでも彼が微笑めば、たちまち王子様に映る。汗で張りついたシャツが引き締まった腰を強調し、大して動いていないジェーンもさっきから火照る頬を冷ませない。

 演出・立ち回り確認を指示してくれたジャスパー様ありがとうございます。こんな仕事なら年中無休でもいい。


「おーい。ジェーン?」

「あっ、はい! なんでしたっけ?」

「次は魔法使ってやってみようかって。だいじょうぶ? 疲れた?」

「全然! 疲れてないですよ。むしろ朝より元気です!」


 きょとんと瞬いたダグラスを見て、ジェーンはいらないことを言った口を押さえた。へらりと笑って誤魔化しつつ、最初の定位置につく。対峙したダグラスがうなずくのを合図に、台本通り動き出した。

 すかさずジェーンも手をかざす。魔力の揺らめきが体を駆け上がった瞬間、視界がブレて激しい焦燥に心が焼かれた。


「待ってください……!」

「えっ」

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