表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
233/365

シェアハウス男3人組③

 ディノはじっとダグラスを見つめた。

 最初はこの男が目障りで仕方なかったなと思う。少しの羨望と大きな嫉妬を抱えていた。それが時々ジェーンにまで向かって、乱暴な気持ちにも駆り立てられた。

 そんな自分をふと嘲笑う。わかっていたことだ。彼女への想いは独り善がりでしかないことを。それでも長い時間募らせてきた想いを、簡単に捨てることができなかった。ダグラスへの想いを、自分に塗り替えさせてやりたかった。

 けれど彼女の涙に、この浅ましい感情は焼き落とされた。


「いいんだ、もう。俺はただのルームメイトでいい」

「ディノ? なにかあったのか……?」


 まるで自分が痛みを負ったかのように、沈んだ顔をするダグラスがちょっとだけおかしい。

 友人と思えば本当にいいやつだ。そんな彼だからジェーンを任せてもいいと思えたのかもしれない。

 ディノは勝手ながら自分の想いもダグラスに託して、できる限りそっけなく振る舞った。


「別に。からかうのに飽きただけだ。俺は最初からそこまでジェーンに気があったわけじゃない」

「……それが本音なら、かなりのクズ男っスけど」


 怪訝な目つきで送られたルークの非難を、ディノは悪くないと思った。


「そう思ってくれても構わない」


 手に入らないのなら、いっそ嫌われたほうが諦めもつく。ズキズキと痛む心には目を伏せて、ディノはこれ以上の追及から逃れるために立ち上がった。


「段取りは俺がつけてやるよ。ロンにうまいこと言って、ジェーンと休日が重なるようにしてやる」

「ディノ、なんでそこまでしてくれるんだ?」


 投げかけられたダグラスの言葉には答えず、ディノはリビングを出た。

 ジェーンを応援するため。自分の想いを断ち切るため。ぽつぽつと浮かび上がる理由とは違い、奥底に沈む不安がある。


「ロンがわからなくなった、から……。ジェーンの気持ちを無視してまでなんて、俺にはできない……」


 父への戸惑いとジェーンを想う苦しみからこぼれた吐息は、しんと静まり返った廊下に溶けて消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ