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悪竜シャルドネ③

「ジャスパー部長。だから創るのはいいけど、消すのが大変なんですってば」

「あ、いや。本番はふたつか三つにするって。そんなにドンパチするシナリオじゃないからな」


 クリスの指摘に乾いた笑みをこぼすジャスパーを横目に、ジェーンは舞台から飛び下りた。振り返る部員たちの視線に構わず、まっすぐダグラスたちの元へ駆ける。


「ちょっと、ジェーン!?」


 ジェーンはカレンの腕を取り、戸惑う彼女を壁際へ引っ張った。


「カレン。シャルドネ役のオーディション、受けてみませんか」


 そっと肩を掴み、メガネ越しにレモン色の瞳を捉える。


「カレンがカレンのまま輝けるように、私が魔法をかけますから」

「ジェーン……。そんなこと覚えてたのね」


 少し気まずそうにカレンは視線を下げた。

 役者として成功するためには、プルメリアのようにならなければいけない。そう言ったカレンの言葉が正しかったとしても、きっと正解はひとつじゃない。


「理想とは少し違う形かもしれません。ですが、理想に近づくことはできるはずです」


 恋をして変わっていく自分をプルメリアが恐れていたように。記憶をなくして、自分というものがわからなくなったこの寂しさのように。自分を偽って生きていくことはきっと、辛くて苦しいから。


「創り変えてみせます。あなたが輝ける舞台セカイに」

「……わかった。やってみるわ。ジェーンがそこまで言うなら私もがんばれそう」


 ジェーンは喜びのあまりカレンの手を両手で包み込んだ。するとカレンも目元をやわらかくほころばせて、握り返してくれる。

 ふたりはどちらからともなく笑い声を響き重ねた。




 * * *



 風呂から上がったディノは、一階の共用リビングで奇妙なものを見た。ソファの周りをうろつくダグラスだ。

 そのソファではジェーンを挟んで、プルメリアとカレンが新しい石けんを持ち寄っている。なんでもジャスミンとかラベンダーの香りつき新作石けんだそうだ。鼻を寄せては「いいにおい!」ときゃいきゃい盛り上がっている。

 その様子をダグラスはちらちらとうかがっている。まさか混ざりたいのか? いくら好青年で通っているダグラスでも、やめておけと忠告するところだ。

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