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変化する夢①

 最近の夢はいつも薄暗かった。


「ダグ? ダグ、どこにいるんですか」


 目覚めて、部屋に恋人がいないとわかると、どうしてだか言い知れない不安と焦燥に駆られた。怖くてベッドから下りることもできず、弱虫な子どものように泣き出してしまう。


「ダグ……! やだ、こわいよっ。ひとりにしないで……帰ってきて……!」

「お待たせ! 今帰ったよ!」

「ダグ……!」


 玄関扉を開けて現れた恋人へ、空気を求めるように手を伸ばす。この頃、彼はラフな部屋着ではなく、青くてベルトやサイドバッグがたくさんついた服を着ていた。

 抱き締めてもらうと汗のにおいがする。それに少しだけ鼻につくにおいも混じっている。


「どこに行ってたんです? なにをしているのですか?」

「だいじょうぶだよ。きみはなにも心配しなくていい」

「でも……っ。じゃあ私も連れてってください!」

「ダメだよ。それじゃ意味がない。きみを守るために俺は外へ行ってるんだから」

「守らなくていいです。そばにいて」


 縫い留めるようにダグの手を押さえ、彼が生まれた証――赤いアザをなでた。ダグは息を抜くように笑って、不安に強張る恋人の頬を包み込む。


「俺もずっといっしょにいたいよ。そのために今、ちょっとだけ我慢しなきゃならないんだ。わかって。ね? 俺のわがままな女王様」


 頬にキスを贈って、ダグは離れようとする。ハッと気づいて夢中で彼の手を引き止めた。


「行っちゃダメです! ダグ、今私たちはお互いのことを忘れて心がバラバラなんです! だからここで離れちゃいけないんですよ、きっと……!」

「また夢の話? そっか。それで余計に不安になってるんだな」


 なだめるように髪をすいていた彼の手が、突然止まった。かと思うと顔をしかめ、額に手をやり息を噛む。


「ダグ!? 苦しいんですか!? どこか怪我を……!?」


 触れようとした彼の肩がせつな、ノイズの走る映像のように乱れて目を剥く。

 今のは? 夢が乱れただけ?

 声もなく混乱していると、ふいに手を掴まれてビクリと跳ねた。指先に灯るほのかなぬくもり、チュッと響く愛らしいリップ音。口づけから顔を起こしたダグは、艶めいた唇だけでにこりと微笑み覆いかぶさってくる。

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