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ケーキと恋ばな②

 ナイトテーブルにあった体温計を差し出してくれる。恥ずかしさでちょっと体温が上がった気がするが、ジェーンは大人しくプルメリアに従った。


「……あの、すみません。プルメリアに風邪をうつしてしまったのは、私かもしれないです」


 機械が熱を測る間の沈黙に急かされて、ジェーンは本題を切り出した。半分ほど食べたケーキを見ながらプルメリアは微笑む。


「そんなこと気にしてたの? いいんだよ。ジェーンだって風邪になりたくてなったんじゃないし。私がみんなにうつしちゃうことだってある。こういうのはお互い様だよ」

「お互い様……」


 そう言ってなんでもないことのように笑ってみせるプルメリアの姿が、ダグラスと重なる。寝込んだのが彼でもきっと同じように笑っていた。


「プルメリアはダグが好きですか」


 気づけばそんなことを尋ねていた。そして口にしてみて、本当に言いたかった本題はこっちかもしれないと思った。

 プルメリアは驚いたのか、すぐに返事をしない。けれど少し怖くて、彼女の顔を見ることができなかった。体温計を挟む腕に自然と力がこもる。


「……うん。好きだよ」


 小さく息を呑む。はじめに感じたのは間違いなく小さな痛みだった。カレンからプルメリアの気持ちは聞いていたが、本人から聞いて揺るがないものになってしまった。

 ダグラスとプルメリアは両想いだ。

 けれどジェーンの胸には衝撃ととも、なにかつかえていたものが落ちたような気持ちも芽生えていた。そのお陰で想像よりもずっと落ち着いている自分がいる。


「ジェーンもダグが好き、だよね?」

「ふえっ? わ!? あっ、あわわわ……!」


 思わずとんきょうな声を上げてしまった瞬間、体温計が鳴り出して肩が大げさにびくつく。焦りのせいでアラームをなかなか止められず、プルメリアに笑われてしまった。


「ジェーンて、かわいいよね」

「か、からかわないでください! それにかわいいのはプルメリアのほうです!」

「熱どうだった?」


 ずいと覗き込まれて閉口する。体温計は三十八度一分と告げていた。


「ちょっと高いね。部屋で休む?」

「プルメリアの発言にいろいろドキリとさせられたせいです。それにこんな中途半端に切り上げられても絶対寝つけません!」

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