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雨のカーテンに包まれて④

 顔ごと背けて、ダグラスはぼそぼそと言う。オレンジの髪から覗いた耳がわずかに赤くなっているのを見つけたら、構わずにはいられない。


「どうしてですか?」

「だって……ほら、またディノに迫られたら困るだろ」

「あ……」


 キッチン台に押さえつけられた光景がにわかによみがえり、今度はジェーンの頬が熱くなる。

 手作りのお菓子をねだられただけだけど、ディノのすらりと高い体で阻まれ、切れ長の若葉の目に見下ろされて、ダグラスに感じたことのない緊張が胸を締めつけた。

 ジェーンは思わず頬を叩いて熱を散らす。単純に恥ずかしかっただけだ。ウソつきディノにそう思わされるのも悔しいけれど。


「もしかして、ディノにまたなにかされた?」


 その様子をどう見たのか、ダグラスに問われてジェーンは慌てて手を振った。


「い、いえっ。あれからは特に……! 園芸部ではお世話になっていますし。ディノは本当に植物に詳しいんですよ。寄せ植えする時なんて、花や草がどう成長するか計算して植えるんだそうです。私花壇を見てそんなこと考えたこともなかったので、すごく感動しちゃいました!」

「ふうん。いつの間にか仲よくなってたんだな」


 はい! と答えてから、ジェーンはダグラスの口調に違和感を覚えた。なんだかつまらなそうに、すねて聞こえた。

 見るとダグラスは口を押さえて目を逸らしている。その表情は自分でも驚いている様子だった。


「ダグ?」

「ええと、とにかく! また困ったことあったら言って。仕事でもなんでも、相談に乗るから」

「はい。ダグがいてくれると頼もしいです!」

「……だからそういうところなんだけど」


 ぼそりとつぶやいた言葉が聞き取れなくて、顔を覗き込もうとした時だった。後ろからぬっと伸びた手にダグラスの後頭部がど突かれる。振り返ると、苛立たしげに眉間にしわを寄せたディノがいた。

 ダグラスはすかさず傘を放り出してやり返しにいく。負けじと応戦するディノから、ルークはひょいと飛びのいた。


「なにすんだディノ!」

「別に。そこにあんたの頭があったから」

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