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雨のカーテンに包まれて②

「えっと、ジェーン。俺でよかったら傘いっしょに使う?」

「あ、はい。よろしくお願いします……!」

「ははっ。傘創ってくれたのはジェーンだけどな」


 傘持つよ、と言ってくれるダグラスの笑みに胸を高鳴らせ、少し緊張しながら寄り添う。傘を打つ雨音はいつもよりやさしく、そっとふたりを包んで、すぐ前にカレンとプルメリアがいても膜を隔てたように遠い。

 今だけは確かにふたりきりの世界だ。


「なーる。そういうことっスか。じゃあディノが傘持ちっスね。背高いんスから」

「なんでまたお前なんだよ!」


 ダグラスをうっとり見つめるジェーンに、後ろのルークとディノのやり取りは届かない。


「ジェーン、疲れてない? 体調はどう?」

「移動中休めたので、だいぶ楽になりましたよ。それに家にいるより、こうして外に連れ出してもらっていい気分転換ができました」


 よかった、と言うダグラスと微笑み合う。どうなることかと思ったが、バーベキューやお喋りに夢中になっていると生理の辛さを紛らわせることができた。

 家にいたほうがむしろ、今頃寝込んでいたかもしれない。


「もっと寄ったほうがいいよ。肩が濡れる」


 ダグラスはそう言いながら傘をジェーンのほうへ傾けようとする。しかしジェーンはすでに彼の肩が濡れていることに気づいていた。

 やさしい手をそっと押し留め、ドキドキしながら身を寄せる。

 肩が触れ合った。けれど彼はなにも言わない。離れることもしない。心をここまで許してくれたようで、ジェーンの胸にぬくもりが灯った。


「あの、実はさ。ジェーンのことで実家に電話したんだ」


 ふと切り出されて、ジェーンはきょとんと首をかしげた。


「ほら、ジェーンと俺は小・中学校が同じだったろ? だから卒業アルバムを見れば、少なくともジェーンの本名がわかると思って」

「そういうものがあるんですか! うれしいです。ありがとうございます」


 記憶に障害のあるジェーンの言葉を信じて、手がかりを探していてくれたことに舞い上がる。けれどもダグラスは、首裏を掻きながら苦い笑みを浮かべた。

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