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雨のカーテンに包まれて①

 目を見開いてカレンは振り向いた。レモン色の光彩が迷うように揺れ、ぴんと張った水面にしばし静寂が降りる。


「……わからないわ。でも売れるためには、正しい道だと思う」


 そう答えたカレンは取り繕うようにオールを持ち、ゆっくりとこぎはじめた。ルームメイトたちに船尾を向けて、ボートは湖の中心へ進む。カレンは自身の心と向き合うようにうつむいていた。

 ジェーンもまた遠くの山並みを見つめて思考を巡らせる。

 “私”ってなんだろう?




 ボートを降りて、湖周辺の遊歩道を散策している途中、雨が降り出した。そばの木で雨宿りしながら空を見上げ、ぶ厚い雨雲にルームメイトたちは眉を下げる。

 やみそうもない気配に、今日は帰ろうという運びになった。


「私、傘創りますから、ちょっと待っててください」

「お、さすがジェーンちゃん。頼りになるっス!」


 調子よくおだてるルークに笑みを返して、しゅるしゅるととぐろを巻いた柄を創る。その先端がぷっくりと膨れ、みるみる大きくなり弾けた。桃色のガーベラを模したビニールの花弁が咲く。


「わあっ。素敵!」


 跳び跳ねて喜んでくれたプルメリアにそれを渡し、次を創ろうとした時カレンが声を上げた。


「ジェーン、創るのは三本でいいわ」

「え。でも」

「消すの大変でしょ。ふたりずつ差せばいいわよ。ねえ?」


 カレンが同意を求めると、ルームメイトたちは快くうなずく。そういうことならと、ジェーンは黄色と白のガーベラ傘を創った。


「で。どう分かれるっスか?」

「よし。今度こそ俺はジェ――」

「プルメリア、私と入りましょ」

「わわっ!?」


 ディノがなにごとか言った時、ジェーンはプルメリアへ振り返ったカレンに突き飛ばされた。その先にいたのはなんとダグラスだ。思いきり胸板に飛び込んでしまい、受けとめられる。


「だ、だいじょうぶか?」


 ジェーンはさっと身を引き、胸を押さえた。絶対当たってしまった。すみません、と返事するついでにダグラスをうかがい見ると、紫の目が泳いで逸らされる。

 首まで熱くなりながら、ジェーンはカレンをにらんだ。確信犯はほくそ笑んでいる。

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